
お客様情報
- 本社所在地
- 〒921-8835 石川県野々市市上林4丁目477 番
- 設立
- 1990年9月17日
- 資本金
- 1,000万円(2025年6月末現在)
取材当時の情報です
ワークショップ・研修のハイライト
- エンジニアの帰属意識の向上や部門間での意思疎通の活性化が急務に
- 課題解決の起爆剤としてVSMワークショップおよびアジャイル研修を選択
- 現状の可視化、課題の共有、部門を超えた意思疎通、成功体験を実践
“お客様の「なっとく」を、お取引先様の「なっとく」を、そして働く私たち自身の「なっとく」を、まっすぐに追求し続けます”という企業理念のもと、宅配買取をサービスの軸に、 ITを駆使したネット型リユース事業を幅広く展開する株式会社山徳(以下、山徳)。
内製という形で各業務の専門家や、システム開発、デザイン、マーケティング、カスタマーサポートといった部門を保持しながらも、エンジニアの帰属意識や部門間の連携などの面で課題を抱え、その強みを十分発揮できなかった同社では、課題解決の起爆剤としてクリエーションラインが提供するVSMワークショップ、アジャイル研修を選択。現状の可視化、課題の共有、部門を超えた意思疎通、成功体験など多くの効果を得た。
大きな変化を遂げるビジネスに適合できる体制や理念の確立が急務に
「山徳は、設立から35年になりますが、当初、貴金属の買取からスタートしたビジネスが、2010年代に入ってからはネット型リユースにシフトし、現在では9割以上がこの事業形態となっています。このような大きな変化を遂げる中、旧来の社内体制や企業文化がこの変化に適合できないという状況が発生していました」-山徳 代表取締役社長の岩瀬 裕真(いわせ ゆうま)氏は、設立から現在に至る自社の沿革と、抱えていた課題についてこう話す。2019年にM&Aの話が浮上し、岩瀬氏が代表取締役社長に就任後、2020年にM&Aが成立。そしてこの段階から、新たなフェーズに合致した組織造りや企業理念の創出に向けた同社の取組みが本格化する。
社名と併記されるスローガンである“なっとく、ヤマトク”の明文化もその取組みの一つだ。「とにかく、”なっとく”できるまで頑張ろう。大正解や完璧ではないとしても、小さくとも確かな”なっとく”を目指そうというものです。自分達にとって必要な範囲でなっとくしながら、ビジネスを推進できるようにしようと考え、それを実現するための企業理念、ポリシーを構築しました。また点在していた拠点を1ヶ所に集約した新社屋を立ち上げたのも、社内のコミュニケーションを良くするという考えに基づくものです」(岩瀬氏)。
実際に社内の業務を管理するという立場にある、同社管理本部 マネージャーの瀧下 裕貴(たきした ひろき)氏は、「弊社の特徴の一つとして、システム、マーケティング、デザイン、カスタマーサポートといった部門を内製の形で持っている点をあげることができます。本来であれば、このような内製の強みを十分に発揮し、価値の創出や利益の確保に繋げていきたいところですが、実態としては、システム部門のエンジニアが帰属意識を持てなかったり、他部門のことを知らなかったり、それ故に他部門と十分な連携ができていないといった課題があり、これが全社的に見た場合のボトルネックになっていました」と回想する

代表取締役社長
岩瀨 裕真 氏
もちろん何の対策も講じてこなかった訳ではなく、現場での改善や最適化の試行はあったものの、「実際には部門最適、つまり部分最適に留まり、会社全体として俯瞰した全体最適には至っていませんでした」(瀧下氏)。どこの会社でも見られる課題とも言えるが、大きく生まれ変わろうとする同社にとっては、看過できない問題だった。
そこで山徳は、システム開発において関係のあった北國フィナンシャルホールディングス傘下の株式会社デジタルバリューに、システム部門の現状分析と進むべき方向についての検討を依頼。「これによって目指すべき方向性が明らかになり、またそのための土台を実現することができました」(瀧下氏)。
そして次のステップとなる、実務への落とし込みや他部門を巻き込むための施策の具体化にあたり、デジタルバリュー社から紹介されたのがクリエーションラインだった。

管理本部 マネージャー 兼
システムG グループリーダー
瀧下 裕貴 氏
現状把握、そして部門間連携による効率的な業務推進体制構築に向けた取組みとして、クリエーションラインのVSMワークショップとアジャイル研修の受講を決定
2024年7月に実施された、クリエーションラインとの初回のミーティングの印象について、瀧下氏は次のように話す。「真っ先に聞かれた内容が『山徳さんのカルチャーや目指すゴールは何ですか?』というものだったのが印象的でした。今回のプロジェクトを進める上でも、その場限りの研修で終わらせることは絶対したくないと思っており、学んだことを基に弊社側で自走しながら改善し続けられるという形を目指していました。そのためクリエーションラインさんのアプローチは、こちらの希望とも合致しており、お互いに十分話をしながら、その後の対応について確定することができました」。
この段階で、クリエーションライン側から提案されたのは、システム開発における「現状把握」フェーズに関するサービスとして、Value Stream Mapping(VSM)の手法を使って、部門間の業務理解を推進し、社内に存在する課題を見える化するVSMワークショップ。さらに、このワークショップの後続として、アジャイル開発の要素を取り入れ、部門間が連携して一丸となり、効率的に業務を推進する体制を構築するためのアジャイル研修だった。
岩瀬氏は、「デジタルバリュー社と共にシステム部門の方向性を決めた結果、他部門を巻き込むフェーズに進むための土台が固まりました。その際、次のフェーズのガイドを任せることができる会社として、クリエーションラインさんを紹介され、その実力や実績についても十分評価できるものだったため、お任せすることにしました」と話す。
こうしてVSMワークショップの実施(2024年9月)、またフェニックスプロジェクトを含むアジャイル研修の実施(2025年3月)が確定した。
VSM(Value Stream Mapping):トヨタ生産方式の「モノの情報の流れ図」を元に開発された手法で、モノの流れにおいて、起点となる状態から顧客に届くまでの全行程を見える化することによって、ムダや非効率なフローが見える化するため、カイゼンに役立てることができる。今回のVSMワークショップは、社内システムにおける「現状把握」を目的として実施された。
フェニックスプロジェクトワークショップ:DevOps の原則を適用し、多大な改善と事業価値を達成するために課題やチャレンジに立ち向かう組織を描いた革新的な書籍「The Phoenix Project」に沿った形で、DevOps の原則や手法を体感できるワークショップ。参加人数は10〜12人、それぞれに役割(CEO、開発、運用VP、人事、テストなど)が割り当てられる。
VSM ワークショップ:現状分析と改善点の議論・共有
VSM については、事前ヒアリング、事後フォローアップと共に、当日は全5時間(概要説明:1時間 / VSM記述:2.5時間 / 現状分析・ディスカッション:1時間 / 質疑応答:0.5時間)でワークショップが実施され、システム部門全員に加え、営業部門の部門長クラスも全員参加し、約20名の大規模ワークショップとなった。参加者全員が一堂に会し、それぞれの工程の担当と会話をしながら現状のフローをモデリング。モデリング完了後は、現状の状態にムダは無いか等、改善点について全員で議論するという流れの中、幾つかの重要な気づきがあった。
タイミングの重要性
部門最適とは言え、以前の状態でも部門間でのコミュニケーションは図られていたと思っていた瀧下氏だが、 VSMで各工程を可視化し、マッピングしてみたところ思いもかけなかった実態が明らかになった。「実務の中で関係者が集まって意識合わせをするタイミングが、遅過ぎだったことが分かりました。これによって持ち戻りが発生したり、認識がずれたままプロジェクトが進むといった問題が発生していたのです。VSM によってこれらの実態が全員に共有されたことは、非常に大きな成果だったと実感しました」(瀧下氏)。他部門も含めた前後の工程が可視化されたことで、どこを早めれば全体として最適化されるかといった点が明確になった。
デジタルではないアナログな対応もまた有効
VSMでは全体で議論する際、ホワイトボードに付箋を貼って眺めるといったアナログ(リアル)な対応を取る。デジタルが当たり前となっている参加者にとって、これが新鮮かつ有効に感じられる。「デジタル上での可視化は既に行っていましたが、今回のワークショップでは意図的にアナログな形でこれが行われました。その結果、全員で参加しているという意識やライブ感がデジタルより色濃く出ることが分かり、大きな学びになりました」(瀧下氏)。「もともとアナログだった業務をSTEP1だとすると、デジタル化されたタイミングがSTEP2であり、この先、アナログも適所で使用するというのがSTEP3であると認識しています。そしてその段階でのアナログは、以前のアナログとは全く違う価値を持つと考えています」(岩瀬氏)。

アジャイル研修:ワークショップを通じて実践における成功体験を手にする
VSMワークショップの後続として、2025年3月に2日間を使って行われたアジャイル研修では、1日目は部門間連携を学ぶ体験型のフェニックスプロジェクトワークショップを実施し、2日目は、初日の内容を踏まえ、講義&実践的ワークが実施された。キーワードは「素早く」「柔軟に」であり、時流に合わせて柔軟に変化し、着実に成長できる企業を目指す。VSMと同様、多くの気づきがあった研修だが、瀧下氏は「当初、不安も大きかった」と回想する。
成功体験の前に困難な状況を体験し切り抜ける
1日目は、ラウンド1から4まであるフェニックスプロジェクトワークショップが実施されたが、瀧下氏は「1〜2ラウンドでは自分が失敗したのではという不安にかられました」と話す。この段階では思ったようにワークショップ内の実践が進まず、コミュニケーションの改善を図ろうとするものの、それも上手くいかなかった。しかし、このような状況はある意味でワークショップに組み込まれた試練であり、実際のプロジェクトで体験する困難な状況のシミュレーションともいえるものだった。「しかし、そこからメンバー間でどうすべきか?何が足りないのか?といった話し合いをしながら、高速に改善を繰り返すうち、3〜4ラウンドでは前半の遅れを取り戻すことができました。このような対応を行うことで、困難に思える実務の中でも改善を図ることが可能だという共通認識ができたと実感しました」(瀧下氏)。
体験を実業務に落とし込むための実践ワーク
2日目は、1日目のワークショップをふりかえる座学と共に、実業務と結びつけて組織を変革させていくためのワークが実施された。ワークでは、山徳様の中期経営計画をピックアップし、その中から半年単位でゴールを定めて、「明日から動き出せる状態を作る」ためのディスカッションが行われた。概念から実際の業務に活かせる具体的な行動への置き換えを図るもので、単なる研修だけには留まらない“実践的”ワークを象徴する時間となった。そしてこのワークの成果物として教育工数削減プロジェクトが立ち上がり、以降、同プロジェクトについて、クリエーションラインの講師が1ヶ月間、週1回1時間のアフターフォローを行った。
クリエーションラインのファシリテーションによる研修の活性化
クリエーションラインの対応についても高い評価があった。岩瀬氏は、「非常にありがたく思っています。最初からトップギアで研修を受けることができたのは、よい雰囲気を作ってもらったおかげだと実感しています。全員がリラックスして研修に参加し、意見が活発に飛び交うような結果になったのも、クリエーションラインさんのファシリテーションによるものだと思います」と話す。

導入効果:「早めにやり始める企業文化の醸成」と「意思疎通の活性化」が大きな効果
様々な気づきが見られたワークショップと研修だったが、岩瀬氏は最も重要な効果としてVSMについて言及し、「早めにやり始めること」の重要性を全員が共有できた点を強調する。いつまでも執着しないという「早くやめること」には長けた同社だが、「早めにやってみよう」というメンバーはこれまで少なかったと岩瀬氏は指摘する。しかし今回のVSMワークショップを通じて、参加者全員が早期に取組みを開始することの重要性に気づいたことが大きな効果だと話し、「これが企業文化として浸透していけば、新規プロジェクトも自然発生的にもっと沢山生まれるのではないかと期待しています」と話す。
瀧下氏は、社員間での情報共有やコミュニケーションの手段が進化した点をあげ、「今回のプロジェクト後には、こちら側からあえて指示しない状況でも、フリーの共有スペースでホワイトボードを使用して打ち合わせや討議を行うといった姿が見られるようになりました。もちろんデジタルを使用した方がいいケースではデジタルを使用し、アナログが有効な場合はアナログを使用するという使い分けもできるようになりました」と話す。ワークショップに参加したメンバーが率先してこのような行動をとることで、社員間の意思疎通がより容易に、そして活性化された状況が拡散されていくことを瀧下氏は期待している。
今後の展望:新規プロジェクトに適用することで成功体験を創出する
今回のワークショップおよび研修で得られた経験やノウハウは、既に実務に活かされようとしている。
「現在、新規商材開拓プロジェクトと教育工数削減プロジェクトという2つの取組みがスタートしています。このようなプロジェクトを成功裏に進めるためには、様々な部門や担当者との連携が不可欠になりますが、今回得られたノウハウが活かせる格好の対象だと考えています。そしてこれを成功体験とするために、ワークショップや研修の参加者には率先して動いてもらいたいと考えています」と瀧下氏は今後の抱負について語る。
ワークショップや研修がその場限りのもので終わらず、楽しみながら参加し、良い成功体験を得た上で、実際の業務の現場に持ち帰って実践できるという一連の流れが、自分達がイメージした理想の形であり、2つのプロジェクトは正にその成果だったと言及し、岩瀬氏と瀧下氏は今回のインタビューを締めくくった。

今回対応を行ったクリエーションラインのコーチ陣
伊藤 いづみ
Agile CoEチームリーダー、スクラムマスター・アジャイルコーチ
北海道のSIerにてエンジニアとして働く過程で開発プロセスの重要性を感じアジャイルコーチにキャリアチェンジ。 価値を出し続けるチームとなるために自分たちのプロセスをどう変化させていくかを、前向きに考え続けながら困難に立ち向かうことができる勇気あるチームづくりを大切にしている。

笹 健太
Co-Creation Startupチームリーダー・アジャイルコーチ
アジャイルコーチとして様々な企業のアジャイル・DevOpsの導入支援を実施。 前職は某製造業でロボット制御ソフトの開発を担当。その中でアジャイル開発と出会い、実践する中でアジャイルが好きになり、今に至る。 趣味はキャンプと、最近息子と一緒に始めた野球。

中村 知成
Agile CoE スクラムマスター・アジャイルコーチ
前職のWebサービス提供会社にて、ソフトウェアエンジニアとして開発・運用を担当。その後、チーム作りや改善活動の難しさ・楽しさを実感し、アジャイルを突き詰める活動を始める。 クリエーションラインでは、アジャイルを通じてチームやユーザーに喜びを届けることについて模索している。
