GitLab Duo Agent Platform アップデート ─ チームの軌跡を知る次世代AIエージェントがGitLab 18.4で進化

GitLab Duo Agent Platformは、ソフトウェア開発のあらゆる工程にAIエージェント (自律型AI) を組み込み、開発者とAIが非同期に協調できるようにする次世代のAIオーケストレーションプラットフォームです。GitLabが本来持つ開発ライフサイクル全体の情報をAIのコンテキストとして活用できる点で、他の同様なソリューションとは一線を画す特長を持っています。AIエージェントが人間のチームメンバーのように振る舞うことで、生産性や効率を大幅に向上させることを目指しています。
9月24日リリースの GitLab 18.4 で、この方向性をさらに後押しするアップデートが加わりました。本項では、このアップデートを先月のポストに加筆改訂する形で、要点をお届けします。
詳細は以下の公式 Blog ポストをご参照ください。
- GitLab Duo Agent Platform ベータ版:次世代AIオーケストレーション
- GitLab 18.3: ソフトウェアエンジニアリングにおけるAIオーケストレーションの拡張
- GitLab 18.4: 自動化と分析を活用したAIネイティブ開発
開発ライフサイクル全体をカバーするコンテキスト
LLM (大規模言語モデル) は、豊富で適切なコンテキストが与えられることで推論や応答の精度が飛躍的に高まります。
GitLabは元々ソフトウェア開発ライフサイクル全体を一つのプラットフォームでカバーしており、コードだけでなくイシュー、エピック、マージリクエスト、ビルド/デプロイ結果、テスト結果、セキュリティスキャン、インシデント履歴など開発に関するあらゆる情報、言わばチームの開発の軌跡が、GitLab上に蓄積されています。この統合データがLLMへのコンテキストとして活用できる点で、GitLab Duo Agent Platformは他のコード支援AIツールには真似できない強みを発揮します。統合された豊富なコンテキストを得たエージェントは、プロジェクト全体を理解した上で助言や作業を行うことができます。
ナレッジグラフは、コードベース全体をグラフ形式にインデックス化します。これによって、そのままではLLMのコンテキストウィンドウに収まらない大規模なコードベースでも全容をコンテキストに含めることができます。18.4 ではナレッジグラフがベータ版として提供が開始されました。
コード以外の情報については、Deep Research エージェントによってイシュー、エピック、マージリクエストなどをセマンティック検索 (エンベディングによるベクトル類似検索) し、必要な情報を横断的に集約してAIに提供します。
将来は、ナレッジグラフをエピックやイシューなどコード以外の情報に、セマンティック検索をコードベースに、それぞれ拡張し、ナレッジグラフとセマンティック検索のハイブリッドで Deep Research を動作させる計画がされています。
一方で、18.4ではコンテキスト除外機能も追加されました。プロジェクトのリポジトリの指定したファイルやディレクトリを GitLab Duo Agenting Platform がコンテキストとして利用しないようにできます。
複数の専門AIエージェントの協調
多彩な専門エージェント
GitLab Duo Agent Platformでは、目的に特化した多数のAIエージェントがチームの各役割を模した形で提供され、同時並行で動作させることができます。
たとえば開発者エージェントにコード修正を任せている間に、セキュリティアナリストエージェントが脆弱性スキャンを実行し、リサーチエージェントがプロジェクト全体の進捗や関連履歴を分析するといった並行作業が可能です。
以下の多彩なエージェントが標準で提供されます。
- チャットエージェント: チャットボット的にあらゆる開発問い合わせに応答
- ソフトウェア開発者エージェント: 指定されたタスクの実装を行いMRを作成
- テストエンジニアエージェント: 新規コードのバグ検出や修正確認
- コードレビュアエージェント: コード品質やセキュリティ検証と自動マージ
- プラットフォームエンジニアエージェント: CI/CDパイプライン監視やインフラ管理
- セキュリティアナリストエージェント: 脆弱性検知と修正提案
- デプロイメントエンジニアエージェント: 本番環境へのデプロイと異常検知・ロールバック
エージェント「フロー」
こうした個々のエージェントを組み合わせて、より複雑な一連の作業を自動化できるのが フロー (Flow) と呼ばれる機能です。フローは予め作成した複数のエージェントに対する実行計画 (ワークフロー) で、特定のトリガーで自律的に実行できます。例えば、ソフトウェア開発フローでは計画から実装・テストまで複数のエージェントが協調し、機能の要件や仕様をコードに落とし込んで本番リリースするまでを自動化します。
以下のようなフローが標準で提供されます。
- CI/CDパイプライン修復フロー (18.4~): CI/CD定義の問題で失敗したパイプラインを修復
- GitLab CI/CDへの変換フロー (18.3~): Jenkinsfile を .gitlab-ci.yml に変換
- イシューからMRへの変換フロー (18.3~): 要求を解析し実装計画とコード生成を自動実行
- リポジトリ全体の検索置換を行うフロー
- インシデント対応と根本原因分析フロー
AIカタログ
GitLab Duo Agent Platformではこれらの既成のエージェントやフローを自組織に合わせてカスタマイズしたり、新たに作成することも可能になります。例えば、テストエンジニアエージェントに自社のテスト手法や基準を学習させたり、独自の業務フローを自動化するフローをゼロから作成することもできます。作成した エージェント や フロー は AIカタログ を通じてチーム内あるいは自社組織内で共有し他チームから再利用することもできます。
18.4 ではGitLa.comにAIカタログが実験的機能として提供されました。カスタムエージェントの作成も可能になっています。Self-managedには18.5で提供予定です。
コミュニティ全体に公開して共有する 公開AIカタログ も計画されています。GitLabはこのAIカタログによるコミュニティ拡張を重視しており、ユーザーコミュニティが現場のユースケースに根ざしたエージェントやフローを公開・共有することで、プラットフォーム全体の知見が蓄積していくと期待されています。
エージェンティック チャット
18.4 ではエージェンティック チャットに改善が加わりました。
- カスタムエージェントとの会話
AIカタログで作成したカスタムエージェントをリストから選択できるようになりました。 - モデル選択
ユーザーがLLMのモデルを選択できるようになりました。なお、9月29日にAnthoropicからリリースされたClaude Sonnet 4.5も、同日から利用可能になっています。 - 外観と使い勝手の改善
外観が見やすくなり、ツール実行の承認などの使い勝手も改善されました - セッションの改善
全てのエージェントとフローのセッションが、エージェンティックチャットのUIが確認できるようになりました。18.4ではGitLab.comに提供、Self-managedには18.5から提供されます。
外部システムとのシームレス連携
MCPクライアント
MCP (Model Context Protocol) クライアントにより、GitLab DuoのエージェントはJiraやServiceNow、Zendeskといった外部システムに接続し、そこから追加のデータをコンテキストとして取得したり、外部システム上でアクションを実行したりできます。例えば、エージェントがJiraから関連するチケット情報を取得して分析に加えたり、ServiceNowにインシデント記録を自動登録するといった動作も可能になります。
MCPサーバー
GitLabが標準インターフェース (MCP) を提供し、サードパーティ製のAIエージェントや開発支援ツールがGitLabのプロジェクトデータや機能に安全に直接アクセスできるようになります。
これによって、外部のAIコーディング支援ツール等をGitLabと簡単に統合し、リポジトリやイシュー、パイプラインの情報を活用した高度な処理を行わせることができます。
GitLab MCPサーバーが提供するツールは、今後のリリースで順次追加されていきます。
CLIエージェント統合
AnthropicのClaude CodeやGoogleのGemini CLIやAWSのAmazon QといったサードパーティAIをGitLabに組み込むためのCLIエージェント統合も提供されます。開発者がGitLab上でイシューやMRのコメント内で外部AIを @メンション すると、そのAIがコードやその他のコンテキストを自動で読み取り、コード変更の提案やレビューコメントを直接返してくれます。やり取りはすべてGitLab上で行われ、権限管理や監査ログもGitLab側で記録されるため、安全かつ統制の取れた形で外部AIの力を活用できます。
現在の提供状況 (18.4時点)
GitLab Duo Agent Platformは現在公開ベータ段階であり、GitLab 18.2から一部の機能が提供され始め、その後の月次リリースで機能が順次追加提供されています。早ければ年内にも一般提供版 (GA) リリースの予定です。GitLab 18.4時点での提供状況とリリース段階および利用に必要なサブスクリプションは下表の通りです。
カテゴリ | サブカテゴリ | 機能 | リリース段階 | GitLabプラン | Duoアドオン |
---|---|---|---|---|---|
コンテキスト提供 | ナレッジグラフ | ベータ (18.4~) | 全プラン | 不要 | |
Deep Research / Semantic Search | 未提供 | ||||
エージェントとフロー | エージェント | Software Development Agent | ベータ | Premium以上 | Core *1 |
フロー | Software Development Flow | ベータ | Premium以上 | Core *1 | |
Issue-to-MR FLow | ベータ | Premium以上 | Core *1 | ||
Convert CI File Flow | ベータ | Premium以上 | Core *1 | ||
Fix Failed Pipelines Flow | 実験的 (18.4~) | Premium以上 | Core *1 | ||
AIカタログ | AIカタログ | 実験的 (18.4~) | GitLab.com *2 Premium以上 | Core *1 | |
外部連携 | Model Context Protocol (MCP) | MCPクライアント | ベータ | Premium以上 | Core *1 |
MCPサーバー | 実験的 | Premium以上 | Core *1 | ||
CLIエージェント統合 | Anthropic Claude | 実験的 | Ultimate | Enterprise | |
OpenAI Codex | 実験的 | Ultimate | Enterprise | ||
Opencode | 実験的 | Ultimate | Enterprise | ||
Amazon Q | 実験的 | Ultimate | Enterprise | ||
Google Gemini CLI | 実験的 | Ultimate | Enterprise | ||
Agentic Chat | ユーザーのモデル選択 (18.4~) | ベータ | GitLab.com Premium以上 | Core *1 | |
GitLab Web UI | ベータ | Premium以上 | Core *1 | ||
Visual Studio Code | ベータ | Premium以上 | Core *1 | ||
JetBrains IDEs | ベータ | Premium以上 | Core *1 | ||
Visual Studio | ベータ | Premium以上 | Core *1 | ||
Eclipse | 未提供 | ||||
Neovim | 未提供 | ||||
ガバナンス | モデル選択 (18.4~) | GA (一般提供) | GitLab.com Premium以上 | Core *1 | |
コンテキスト除外 (18.4~) | ベータ | Premium以上 | Core *1 |
*1: Duo CoreはGitLab PremiumおよびUltimateに含まれておりDuoアドオンの別途購入は不要です。
*2: Self-managedには18.5から提供の予定です。
GitLab Duo Agent Platformは、今年末の一般提供 (GA) に向けて毎月のリリースで急速に進化しており、エージェントやフローの種類、外部連携の範囲は今後さらに拡大する予定です。来月 18.5 以降のアップデートにもご注目ください。

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