MBTIによるチームビルディング ー チームの「混乱期」を安全に越えるために

こんにちは。
クリエーションライン(以下CL)のCAOのねぎーちょこと、根岸です。

あ、そもそもCAOは Chief Adventure Officer の略で、クリエーションラインの新規事業である、COSTA(成果報酬型エンジニアリングファンド)の事業立ち上げを担っています。

COSTAについては、ともに進めている笹健太が数日後にテーマとして取り上げると思うので、僕からは、いまCLで導入を進めている「MBTI」について、その背景や目的、効能を紹介することを目的に、ブログを書くことにします。

読者(特に組織開発やチーム運営、組織文化に興味のある方)に、MBTI活用の意義と実践例を新たな視点で提供できる内容です。

なお、このブログは、クリエーションライン・アドベントカレンダー2025の記事です。

MBTIの取り組みの土台にあるもの = 「ささエール」

最初にお伝えしておくと、MBTIの導入は、思いつきや流行で進めているものではありません。

CLのオンボーディング改革プロジェクトである「ささエール」の一環として、「MBTIを活用したチームビルディングの強化」が組み込まれています。

「ささエール」は、新しく仲間になった人が、CLという組織の中で安心して立ち上がり、チームの一員として力を発揮できる状態をつくることを目的とした、会社としての取り組みです。

その文脈の中で、MBTIはチームビルディングの取り組みとして位置づけられています。「ささエール」全体については、CHROの小笠原(のびー)がTech Blogで詳しく紹介しているので、ぜひそちらをご参照ください。

そもそもMBTIとは何か

ここ数年日本で若者を中心に爆発的に広まっている「MBTI診断(= 16Personalities診断)」なるものは、実は公式のMBTIとは無関係です。公式のMBTI(米国のThe Myers Briggs Companyが権利を有し、日本では(社)日本MBTI協会が普及を担う国際規格)は、以下の前提に立っています。

  • C・G・ユングのタイプ論を土台とした心理検査であること
  • 自己理解や、無意識の意識化(=自己成長)を目的としたツールであること
  • 有資格者(MBTI認定ユーザー)の支援が前提となること(Web検査で完結しない)
  • スキルや能力を評価したり、人をラベリングしたりするためのものではないこと

本記事で説明している内容は全て、この「公式のMBTI」に関する内容となります。

ちなみに、僕自身もMBTIの有資格者です。
前職では、MBTIをベースに約5年間、組織運営やチームづくりに関わってきました。
その関係で、CLでもMBTIの導入に携わっています。

チームビルディングにおけるMBTIの有効性

チームビルディングの文脈では、タックマンモデルがよく知られています。形成期、混乱期、統一期、機能期というプロセスを経て、チームは成熟していくという考え方です。

図表引用元: https://motifyhr.jp/blog/onboarding/tuckman-model/

特に重要だと言われるのは、この中の「混乱期」です。

「混乱期」とは、遠慮がなくなり、ちょっとしたこと(資料の作り方、会話の仕方、段取りの組み方からちょっとした仕草に至るまで)が不満につながり、ぶつかり合う時期のことです。

どのチームにも必ず混乱期は訪れますし、ぶつかること自体は問題ではないのですが、問題はそこからどう抜けるかです。

混乱期にちゃんとぶつかれないと、表面的には大きな衝突もなく業務が回っている一方で、前提となる認知や価値観のズレが言語化されないまま残ります。そうすると、本音で話せる関係性を作りきれず、結果として、根底では混乱期を脱しきれなくなります。

僕もMBTIに出会う前は、どうやってこの時期を乗り越えればいいかがわからず、対立をエスカレートさせてしまう/言いたいことが言えないまま退社させてしまうといったことを何度も経験しました。。

だからこそ今心から言えることとして、大切なのは、混乱期を「なるべく早く」、そして「根底から」越えることです。

そのためにMBTIが有効だと感じている理由は、MBTIを用いることにより、混乱や対立の原因を「その人の性格」ではなく、「タイプごとの認知や価値観の違い」として扱える点にあります。それにより、ともすると非常に繊細な、個々人の「性質」について、建設的に話すことができるようになります。

例えば以下のように、自分と性質の間に「タイプ」というクッションが入る感じです。

私はついこういうことをしがちです。 → 私のタイプであるXXXXは、こういうことに対してチャージされます。

私は、こういう考え方は違うと思います。 →  私のタイプであるXXXXは、こういう考え方に対する感度が低く、ザワザワしがちです。

そういう意味で、MBTIは、対立を避けるためのツールではなく、違いを安全に表に出し、チームとして共有・再設計するためのツールだと言えます。その結果、混乱期は単なる停滞ではなく、チームの前提を見直し、越えていくためのフェーズへと高めることができるようになります。

定着化への道

CLにおいては、今のところ、全体の約半分、40人に対してMBTIベーシックフィードバックを実施しました。

結果として、10段階評価の平均は9.3、NPS(周囲に広めたい度合い)は+78.8と、非常に高い評価を得ることができています。具体的なコメントについては、前述のCHROの小笠原(のびー)がTech Blogで紹介されているとおりです。

ただし、どんな変革的な取り組みでも言えることですが、一度やって終わりでは定着しません。評価で10を付けた人であっても、1か月後には「記号の意味を忘れました」という状態になるのは、ごく普通のことです。

だからこそ重要なのが、二の矢、三の矢です。

CLでは、すでにタイプごとの取扱説明書ワーク("取説ワーク")は半分のチームに対して実施済みで、今、チームのタイプ理解のセッションの導入も始まりました。

全体としては、以下のような研修が導入・検討されています。

  • 導入済み
    • ベーシックフィードバックセッション #全体の1/2で実施
    • タイプごとの取扱説明書ワーク #全体の1/4で実施
    • チームのタイプ理解ワーク #1チームのみ実施
  • 導入予定
    • リーダーシップスタイルの違いの理解ワーク
    • マネージャー向け個別セッション

個人理解で終わらせず、チームやリーダーシップの文脈にどう接続していくか。そこまで含めて、ようやく「定着」だと考えています。

おわりに

MBTIは、チームの問題をすべて解決する魔法の杖ではありません。
ただ、対話の質を高め、無意識を言語化し、混乱期を安全に越えるための強力な補助線にはなり得ます。

この取り組みが、CLの組織文化の中でどのように根づいていくのか。
そのプロセス自体もまた、一つの冒険(Adventure)だと感じています。

新規CTA