COSTAの挑戦からみるエフェクチュエーション

こちらはクリエーションライン Advent Calendar 2025 の20日目の記事です!
ということで、本日は12/20です!ハッピーバースデー私!
ブログ書きから新しい1年がスタートです!
この記事ではCOSTAことCo-Creation Startup誕生と変遷をエフェクチュエーションの視点でふりかえるものです。COSTAという事業自体は今年誕生し、すでに1度ピボットしています。その誕生とピボットをふりかえると「これってまさにエフェクチュエーションじゃん!」となるポイントが多くありました。
そもそもエフェクチュエーションって何?COSTAって何?という方もいると思うので概要レベルの説明から入ろうと思います。その上で、COSTAにおけるエフェクチュエーションの原則の活用を紹介します。既にCOSTAやエフェクチュエーションは知っている方は、原則の活用事例あたりから読んでもらえればと思います。
この記事がこれから新規事業を立ち上げようとしている人の行動や考えがちょっとでも変わるきっかけになれば嬉しいです!
この記事で言いたいこと
いつものごとく、最初に言いたいことを書いておきます。
新規事業の立ち上げやピボットにエフェクチュエーションの5つの原則は有効!
ビビッとくる原則があればちょっと視点を変えて考えてみるのはどうでしょう?
エフェクチュエーションとは?
Geminiさんにエフェクチュエーションの概要と、5つの原則について説明してもらいました。
エフェクチュエーションの概要
エフェクチュエーションとは、予測不能な状況下で優れた起業家が共通して用いている「行動の論理(思考プロセス)」のことです。
従来の「目標を立てて、そこに向かうための手段を探す」考え方(コーゼーション)とは対照的に、「今持っている手段を使って、何ができるかを考える」というアプローチを取ります。
以下の「5つの原則」がその中心となっています。
エフェクチュエーションの5つの原則
- 手中の鳥(Bird in Hand)の原則
- 「自分が誰か」「何を知っているか」「誰を知っているか」という、今すでに持っている手段(リソース)から始めます。
- 許容可能な損失(Affordable Loss)の原則
- 期待される利益を追うのではなく、「失敗してもこれだけなら失っても大丈夫」という許容範囲内で投資します。
- レモネード(Lemonade)の原則
- 「偶然」や「失敗」を排除せず、それを活用して予期せぬチャンスや価値に変えていきます(酸っぱいレモンを甘いレモネードにする)。
- クレイジーキルト(Crazy Quilt)の原則
- 競合を分析するのではなく、協力してくれるパートナー(ステークホルダー)を募り、一緒に新しい価値(キルト)を創り上げます。
- 飛行機のパイロット(Pilot in the Plane)の原則
- 未来を予測するのではなく、自分たちがコントロールできることに集中し、自らの行動で未来を創り出します。
COSTAとは?
こちらも平等にGeminiさんにまとめてもらいました。
COSTAの概要
一言で言うと「技術(開発力)を投資して、スタートアップと共に事業を創り上げる『共創型』の支援モデル」です。
単なる受託開発(外注)ではなく、「創業チームの一員」として深く関わるのが最大の特徴です。
COSTAの3つの大きな特徴
- 「技術」による出資
- 高品質なエンジニアチームやAI技術を、現金の代わりに「株式(エクイティ)」や「レベニューシェア」を対価として提供します。
- リスクとリターンの共有
- 事業が成功したときにのみクリエーションライン側もリターンを得る仕組みです。「作って終わり」ではなく、成功にコミットするパートナーシップを築きます。
- アジャイルとAI駆動
- メガバンクや製造業などの厳しい要求に応えてきた開発チームが、アジャイル手法を用いてスピーディーに事業を形にします。
COSTAの誕生・ピボットにおけるエフェクチュエーション5つの原則
COSTAが誕生しピボットを経て今に至るまでの中で、ポイントになった部分を5つの原則観点でふりかえります。
手中の鳥(Bird in Hand)の原則
既にあったリソース
クリエーションラインでは、これまで様々な顧客と開発チームを結成し、準委任契約でアジャイル開発を実践し続けてきました。
追加されたリソース
上記の経験の中で、徐々にPOのサポートをするエンジニアも少しずつ増え、開発・運用以外にもやれることがジワジワ増えてきています。そこにビジネス・プロダクトデザインを得意とする企業の代表をしていたねぎーちょが入ってきます。これで手札が揃いました!
可能になってきたアイデア
「手持ちのリソース」を活用するとこれまでと違うアイデアが浮かび上がってきます。「開発・運用だけではなく、ビジネスやプロダクトのデザインから始める共創」です。更に一歩踏み込むと「最初から最後まで共創するのだから成果にコミットした契約」というアイデアも出てきます。準委任契約のような人月での報酬ではなく、ビジネスとして求めていた成果(売上など)に連動する報酬です。
許容可能な損失(Affordable Loss)の原則
気になるリスク
「成果報酬型で一気通貫で新規ビジネスを作り、レベニューシェアのような成果連動で報酬をもらう」これは工数連動で安定的に報酬をもらえている現状と比べるとリスクが非常に高いです。めちゃくちゃ働いたけど売上0円、というのがあり得るためです。
許容可能な損失①
この時にリスクとリターンを検討も計算しつつも、素早く進めるために最初に決めたのが「撤退条件」です。現状の準委任契約の利益、手持ちの現金を考慮し、COSTAで失敗できる金額を見積もりました。金額が分かると挑戦できる回数や巻き込める人数もおおよそ見えてきました。
許容可能な損失②
お金以外にも時間は非常に大事なリソースです。失敗するにしても成功するにしてもこの時期までには白黒つけよう、という話も決めました。
失敗したとしても許容可能なお金・時間を序盤で決めたことで動き出しが早くなりました。
レモネード(Lemonade)の原則
偶然の失敗?
成果報酬の1つの形である「ビジネスKPI連動」のプロジェクトがあまりうまくいきませんでした。KPIを設定して進めていたものの、ユーザーの反応からピボットを行うことを決め、KPI自体を変える必要が出てきたためです。売上のような1次情報ではなく、KPIのような2次情報を成果報酬の軸に設定することはシンプルでないため、何かあった時に運用するのが難しくなります。
失敗ではなくレモネードへ
この出来事を「ただの失敗」とするのではなく、「新しい成果報酬のモデルを検討する機会」や「メイン顧客を見直す機会」とすることができました。そこに次のクレイジーキルトの原則が入ってきます。
クレイジーキルト(Crazy Quilt)の原則
クレイジーキルト前の検討
新しい顧客としてスタートアップをターゲットにするのはどうか?というアイデアが出てきました。スタートアップであれば契約周りもスピード感があるのでCOSTA契約を始めやすそうで良さそうです。また、最初は1つの事業しかないことが多いため売上が明確であり、レベニューシェアがやりやすいようにも感じました。
クレイジーキルト後の検討
そんなタイミングでスタートアップやVCの方とお話をしていると、「大体のスタートアップは現金が足りていないことが多く、レベニューをシェアするより株で開発をするのはどう?」とアドバイスをくれる方がいました。
検討した結果「メイン顧客はスタートアップ」、「新しい成果報酬モデルとして株式対価」というのができました。これが第一のピボットタイミングになります。
飛行機のパイロット(Pilot in the Plane)の原則
作りたい未来
ピボット後のCOSTAにおける成功する上で重要な要因を考えてみると「COSTAに共感するスタートアップとの契約」と「スタートアップと一緒にビジネスやプロダクトをデザインしていく能力獲得」かなと思いました。この2つを達成していくためにそれぞれコントロールできることに集中してきました。
コントロールできる行動①
「COSTAに共感するスタートアップとの契約」をするために、VCや経営者の知り合いにCOSTAに合いそうなスタートアップを紹介してもらうことにしました。また、スタートアップのイベントに参加して新しい繋がりを作る、という自分たちでコントロール可能なことを続けています。
コントロールできる行動②
「スタートアップと一緒にビジネスやプロダクトをデザインしていく能力獲得」のために、採用と教育の2軸で行動しています。採用では、募集要項をしっかり書くことや、PdMのイベントに参加して接点を作るといったことをやっています。教育ではプロダクトコーチの方に相談させてもらっています。
まとめ
この記事ではCOSTAの誕生とピボットをふりかえった時に気付いたことを共有しました。気付いたこととは"COSTAのような新規事業を立ち上げる時はエフェクチュエーションの「5つの原則」が効果的である"ということです。
エフェクチュエーションの5つの原則の説明を読むと「**するのではなく、##する」と書いています。わざわざ「**するのではなく」と書いているのは、「**する人が多い」ということだと思います。私の経験上、このエフェクチュエーションではないアプローチ(コーゼーション)は、新規事業のスタートを遅らせ、リソースを枯渇させ、動きを止めてしまうことが多いように感じます。
もしこの記事を読んでいる方がこれから新規事業を始めようとしているのであれば、5つの原則を軸に行動をチェックしてもらえればと思っています。今までとは違う新しいアプローチが選択肢に加わっていると幸いです。
補足
「**するのではなく」という記載がありますが、極端に「競合は分析しちゃダメ」とか「未来を予測してはダメ」とかではないと思っています。新規ビジネスを成功させる上で必要であれば、分析でも予想でもした方がいいと思っています。ここで言っているのは「過剰を避けましょう」であったり「こう考えたら先に進めるんじゃない?」ということかなと思っています。
