プロンプトエンジニアリングの終焉。Gemini 3.0 Proに『超・適当な指示』を投げたら、勝手に正解に辿り着いた話

私たちは「指示出し」に疲れすぎていた

  • 「AIを使いこなすには、詳細なプロンプトが必要」…そんな常識は、Gemini 3.0の登場で過去のものになりました。
  • 最新のGoogle Cloud(Vertex AI)が提供するのは、言葉足らずな指示でも文脈を読み、論理的に推論して答えを出す「真のパートナー」です。
  • 今回は、あえて「新人への雑な振り」のような指示をGemini 3.0 Proに投げ、どう対応するか検証します。
  • 【検証】Vertex AI Studioで「1行だけの指示」を試す
    • 使用モデル: Gemini 3.0 Pro
    • 実験内容: 従来のAIなら「情報が足りません」と返すか、ありきたりな答えしか出せない指示を出す。
  • 今回のプロンプト:来月発売する新しいエナジードリンクのWeb CMの企画を考えて。ターゲットは「残業続きのエンジニア」で。面白おかしい感じで頼む。」
    • (※商品の詳細も、予算も、媒体も何も決めていない、本来なら怒られるレベルの指示)

検証の内容

下記手順で実施しました。

Step 1:Vertex AI Studio を開く

  1. Google Cloudコンソールのメニューから 「Vertex AI Studio」 をクリックします。
  2. 「言語(Language)」「テキスト チャット(Text Chat)」 を開きます。

Step 2:最新モデル「Gemini 3.0 Pro」を選択

  1. 画面右上のモデル選択プルダウン(現在は gemini-2.5-pro などになっている場所)をクリックします。
  2. リストの中から gemini-3.0-pro (その時点で選択できる最新・最上位のモデル)を選んでください。

Step 3:あえて「雑なプロンプト」を入力する

チャット欄に、以下のプロンプトをそのままコピペして送信してください。

来月発売する新しいエナジードリンクのWeb CMの企画を考えて。ターゲットは「残業続きのエンジニア」で。面白おかしい感じで頼む。

Step 4:AIの「推論」を確認する

Gemini 3.0 Proからの回答を確認します。

  • 確認ポイント:
  • 「エンジニアあるある(バグ修正、深夜のデプロイなど)」が盛り込まれているか?
  • 「面白おかしい」というトーン&マナーを理解しているか?
  • 指示していない「キャッチコピー」や「コンテ(場面構成)」まで気を利かせて作っているか?
「残業続きのエンジニア」というニッチかつ共感性の高いターゲットに向けた、Web CMの企画を3案提案します。
エンジニアまたあるある(「全角スペースの悲劇」や「仕様変更」)を盛り込みつつ、**「このドリンクを飲めば、バグも眠気もぶっ飛ぶ」**というメッセージをコミカルに伝えます。

コンセプト案①:『エラーログの幻聴』篇
【テーマ】 極限状態の幻覚・幻聴を逆手に取ったシュールコメディ
【トーン】 ホラー映画風の導入 → ハイテンションな解決

・シーン1:深夜3時のオフィス
薄暗い部屋。モニターの青白い光だけがエンジニア(30代男性、死んだ魚のような目)を照らしている。彼はボサボサの頭で画面を凝視している。
・シーン2:画面の異変
IDE(統合開発環境)の画面に赤いエラーメッセージが出る。
Error: 404 Not Found
すると、画面から突然**「お前の週末も Not Found だよ〜ん!」**という甲高い声が聞こえる。
・シーン3:悪化
エンジニアが二度見する。次はコンパイルエラーの行が**「ここ!ここ!セミコロン忘れてるよ!人生の区切りも忘れてるんじゃない?」**と煽ってくる。
キーボードの隙間から小さなバグ(虫の姿をした妖精)が出てきて、「仕様変更、来ま〜す」と耳元で囁く。
・シーン4:解決
エンジニア、引き出しから新エナジードリンク『[商品名]』を取り出し、プシュッ!と開ける。その音でバグたちが「ヒィッ!」と怯える。
ゴクゴク飲むと、エンジニアの目がゲーミングPCのように七色に発光する。
・シーン5:オチ
超高速タイピングで全てのバグを修正。「ッターン!」とEnterキーを叩くと、画面に BUILD SUCCESS の文字。
ナレーション:「バグった脳みそに、パッチを当てろ。新エナジードリンク『[商品名]』。」
ラストカット:まだ少し目が光っているエンジニアが「進捗、良いです」とサムズアップ。

コンセプト案②:『物理的オーバークロック』篇
【テーマ】 PCスペックではなく、人間側を無理やりスペックアップさせる
【トーン】 アメコミ風 / カンフー映画風

・シーン1:重たい処理
「ローカルサーバー、重っ……」
プログレスバーが99%で止まったまま動かない。エンジニア(20代女性、パーカー姿)がイライラして指をトントンしている。隣の席の同僚も「デプロイ終わんね〜」とゾンビ化している。
・シーン2:注入
女性エンジニア、『[商品名]』を一気飲み。
突然、彼女の体内から**「ウィィィィン……(ファンの回る爆音)」**が聞こえ始める。
・シーン3:覚醒
彼女の背中から排熱ダクトのような煙がプシュー!と噴き出す。
「冷却完了、動作周波数5.0GHz」とロボット声で呟き、キーボードに手を置く。
・シーン4:物理攻撃
タイピングが速すぎて指が残像に見える。キーボードから火花が散る。
画面上の処理速度が爆上がりし、プログレスバーが突き抜けて120%とかになる。
隣の同僚が、彼女のタイピングの風圧で飛ばされそうになりながら「先輩!人間やめてます!」と叫ぶ。
・シーン5:オチ
モニターが熱に耐えきれず少し溶けているが、仕事は終わっている。
ナレーション:「人間性能をオーバークロック。新エナジードリンク『[商品名]』。」
テロップ:※キーボードは大切に扱いましょう。


コンセプト案③:『全角スペースの呪い』篇
【テーマ】 エンジニアなら誰もが経験する「見えない敵」との戦い
【トーン】 壮大なドキュメンタリー風 → 脱力系のオチ

・シーン1:絶望
壮大なクラシック音楽(「O Fortuna」など)が流れる。
チームリーダーが叫ぶ。「なぜだ!なぜ動かない!コードは完璧なはずだ!」
ホワイトボードには複雑なアーキテクチャ図。床には散らばるピザの箱。
・シーン2:迷宮入り
「構文エラーなし…論理矛盾なし…なのに動かない…」
全員が頭を抱え、オフィスは通夜のような雰囲気に。一人が「もうだめだ、田舎に帰って農業をするんだ…」とうわ言を言い始める。
・シーン3:ひらめき
新人エンジニアが『[商品名]』を飲む。
視界がサーモグラフィーのように変わり、コードの行間にある**「全角スペース」だけが赤く光って見える**能力(エナジー・アイ)が開眼する。
・シーン4:摘発
新人が叫ぶ。「そこだー!! 38行目! 全角スペースが潜んでいるぞ!」
全員がその行に群がる。「いた…!」「なんて邪悪な気配だ…!」「消せ!早くBackSpaceキーを!」
・シーン5:歓喜
全角スペースを消した瞬間、システムが正常稼働。
オフィス中がNASAのロケット打ち上げ成功時のような大歓声に包まれる。抱き合うおじさんたち。紙吹雪が舞う。
ナレーション:「見えない敵(全角)も見えてくる。新エナジードリンク『[商品名]』。」
ラストカット:画面の隅にポップアップ通知「月曜日は祝日です」。全員が真顔に戻る。


キャッチコピー案(Webバナー等への展開用)
「デバッグ完了まで、あと3本。」
「カフェイン駆動開発(CDD)専用燃料。」
「その眠気、403 Forbidden。」
「CTO(Cheating Tired Organism = 疲れた体を騙す)公認。」


拡散施策(SNSキャンペーン)
ハッシュタグ:#エンジニアの走馬灯
このドリンクを飲んで復活する前に見ていた「バグやトラブルの悪夢」を募集。

・例:「金曜18時の『ちょっと相談いい?』」「rm -rf / を打ちそうになった瞬間」など。
・大賞にはエナジードリンク1年分(365本)と、**「Enterキーだけやたらデカいクッション」**をプレゼント。
いかがでしょうか?
ターゲット層は自虐ネタを好む傾向があるため、あえて「過酷な労働環境」をユーモラスに描くことで、「わかってるねえ(笑)」という共感を狙います。

【結果】AIが「思考」して、空白を埋めてきた

  • 出力結果の衝撃:
    • AIが即答せず、一瞬の間(推論タイム)を置いて回答。
    • 「ターゲット層は自虐ネタを好む傾向がある」
    • 「拡散施策(SNSキャンペーン)」
    • 「過酷な労働環境」をユーモラスに描くことで、「わかってるねえ(笑)」という共感を狙う」
  • 考察: 人間が言わなかった「傾向」や「拡散施策」を、AIが「推論(Reasoning)」で勝手に補完している。これが3.0世代の実力。

なぜ「雑な指示」でも動くのか?

〜確率から論理へ。Gemini 3.0 Proが手に入れた「思考」の正体〜

これまで(Gemini 1.5世代まで)のAIは、極端に言えば「次に来る確率が最も高い言葉を予測するマシーン」でした。だからこそ、文脈が足りないと確率計算がブレてしまい、ありきたりな回答しか返せませんでした。

しかし、Gemini 3.0 Proは違います。回答を出力する前に、「Deep Reasoning(深層推論)」と呼ばれる人間のような思考プロセスを挟んでいます。

私たちが「ターゲットは残業続きのエンジニア。面白おかしい感じで」という雑な指示を投げたとき、AIの内部では以下のような自問自答(Chain of Thought)が高速で行われています。

  1. 意図の解釈: 「『残業続きのエンジニア』がターゲットだ。単に『お疲れ様』と言うだけでは響かない。彼らが抱える特有のストレス(バグ、仕様変更、深夜のデプロイ)に寄り添う必要がある」
  2. トーンの決定: 「『面白おかしい』という指示がある。悲壮感を出すのではなく、深夜テンションのコミカルさや、『あるあるネタ』で共感を狙うべきだ」
  3. アイデアの構築: 「エナジードリンクを飲む瞬間=エラーが解決して覚醒する瞬間、という演出はどうだ? 専門用語(Git push forceなど)をあえて使うのも効果的だろう」

このように、AIが「考える(Think)→ 計画する(Plan)→ 書く(Write)」という手順を踏んでから出力するため、人間がいちいち細かい演出を指定しなくても、ターゲットの心に刺さる「正解」に辿り着けるのです。

この進化により、私たちはもう「AIのご機嫌を伺うような、呪文のようなプロンプト」を必死に覚える必要はありません。同僚に話しかけるのと同じ言葉で、AIは意図を汲み取ってくれます。

【まとめ】「AIを使う」から「AIと阿吽の呼吸で働く」へ

Gemini 3.0 Proの登場は、ビジネスにおけるAIの立ち位置を「便利なツール」から「優秀なパートナー」へと完全に書き換えました。

これまでの私たちは、AIに対して「何を、どうやって、どの順番でやるか」を細かく指示する「現場監督(マイクロマネージャー)」になる必要がありました。 しかし、これからの未来は違います。私たち人間に求められるのは、「何を目指すのか(ビジョン)」と「誰のためにやるのか(パーパス)」を語る「総監督(ディレクター)」としての役割だけです。

  • 人間: 「エンジニアたちが、思わずニヤリとして元気が出るような動画を作りたいんだ」
  • AI: 「それなら、深夜のコーディング画面を舞台にした、こんな『あるある』ストーリーはいかがですか?」

この「阿吽(あうん)の呼吸」こそが、Google CloudがVertex AIを通じて提供する新しい働き方です。 細かい手順はAIに任せ、私たちは人間にしか描けない「大きな地図」を描くことに集中する。そんな未来が、ブラウザの向こう側ですでに待っています。

あなたも今すぐVertex AI Studioを開いて、この「新しい相棒」に話しかけてみてください。きっと、その理解力の高さに驚くはずです。

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