GitLab Duo Agent Platform アップデート ─ チームの軌跡を知る次世代AIエージェント、GA目前 18.7最新情報

GitLab Duo Agent Platformは、ソフトウェア開発のあらゆる工程にAIエージェント (自律型AI) を組み込み、開発者とAIが非同期に協調できるようにする次世代のAIオーケストレーションプラットフォームです。AIエージェントが人間のチームメンバーのように振る舞うことで、生産性や効率を大幅に向上させることを目指しています。GitLabが本来持つ開発ライフサイクル全体の情報をAIのコンテキストとして活用できる点で、他の同様なソリューションとは一線を画す特長を持っています。
12月18日 の GitLab 18.7 リリースで、Duo Agent Platform の GA (Generally Available/一般提供) が次の 1月15日の 18.8 を予定していることが公表されました。本稿では、前回 18.4 のポストに加筆修正する形で、その後 18.7 までに追加された最新情報をお届けします。
詳細は以下の公式 Blog ポストをご参照ください。
- GitLab Duo Agent Platform ベータ版:次世代AIオーケストレーション
- GitLab 18.3: ソフトウェアエンジニアリングにおけるAIオーケストレーションの拡張
- GitLab 18.4: 自動化と分析を活用したAIネイティブ開発
- GitLab 18.5:ソフトウェア開発を前進させるインテリジェンス
- GitLab 18.6: 設定からコントロールへの進化
- GitLab 18.7: AIによる自動化、ガバナンス、開発者エクスペリエンスの強化
GitLab Duo Agent Platformは現在ベータ版のため一部機能を除き追加費用なしで利用できます。GA (一般提供) 後の利用には追加費用が必要になります。
開発ライフサイクル全体をカバーするコンテキスト
「コンテキストが全て (Context is everything)」と言われるように、LLM (大規模言語モデル) は、豊富で適切なコンテキストが与えられることで推論や応答の精度が飛躍的に高まります。
GitLabは元々ソフトウェア開発ライフサイクル全体を一つのプラットフォームでカバーしており、コードだけでなくイシュー、エピック、マージリクエスト、ビルド/デプロイ結果、テスト結果、セキュリティスキャン、インシデント履歴など開発に関するあらゆる情報、言わばチームの開発の軌跡が、GitLab上に蓄積されています。この統合データがLLMへのコンテキストとして活用できる点で、Duo Agent Platformは他のコード支援AIツールには真似できない強みを発揮します。統合された豊富なコンテキストを得たエージェントは、プロジェクト全体を理解した上で助言や作業を行うことができます。

近年は100万トークン級の長コンテキストを扱えるLLMもありますが、それでも10万行を超えるような中規模以上のコードベース全体をそのまま入力するのは非現実的です。そこでDuo Agent Platformは、プロジェクトを解析してナレッジグラフやエンベディングを生成し、コードベース全体から必要な箇所を効率的に抽出、それをコンテキストとしてLLMに与えることで、RAGに相当する動作を実行します。
これは、コードに限らず、イシューやマージリクエストなども横断して扱う方向で開発が進んでいます。
複数の専門AIエージェントの協調
多彩な専門エージェント
Duo Agent Platformでは、目的に特化した多数のAIエージェントがチームの各役割を模した形で提供され、同時並行で動作させることができます。
たとえば開発者エージェントにコード修正を任せている間に、セキュリティアナリストエージェントが脆弱性スキャンを実行し、リサーチエージェントがプロジェクト全体の進捗や関連履歴を分析するといった並行作業が可能です。
以下の多彩なエージェントが標準で提供されます。また、独自のカスタムエージェントの作成も可能です(18.7~)。
- チャットエージェント(18.2~): チャットボット的にあらゆる開発問い合わせに応答
- ソフトウェア開発者エージェント(18.3~): 指定されたタスクの実装を行いMRを作成
- プランナーエージェント(18.5~): 計画・優先順位付け・バックログ分析など
- セキュリティアナリストエージェント(18.5~): セキュリティ運用の自動化
- データアナリストエージェント(18.7~): データ探索の会話化
- テストエンジニアエージェント: 新規コードのバグ検出や修正確認
- コードレビュアエージェント: コード品質やセキュリティ検証と自動マージ
- プラットフォームエンジニアエージェント: CI/CDパイプライン監視やインフラ管理
- デプロイメントエンジニアエージェント: 本番環境へのデプロイと異常検知・ロールバック
エージェントフロー
こうした個々のエージェントを組み合わせて、より複雑な一連の作業を自動化できるのが フロー (Flow) と呼ばれる機能です。フローは予め作成した複数のエージェントに対する実行計画 (ワークフロー) で、特定のトリガーで自律的に実行できます。例えば、ソフトウェア開発フローでは計画から実装・テストまで複数のエージェントが協調し、機能の要件や仕様をコードに落とし込んで本番リリースするまでを自動化します。
以下のようなフローが標準で提供されます。また、独自のカスタムフローの作成も可能で、メンション(18.3~) や担当者/レビュアーアサイン(18.5~) をトリガーに起動できます。
- ソフトウェア開発フロー (18.2~): SDLC全体を通して動作
- 開発者フロー (18.3~): 要求を解析し実装計画とコード生成を自動実行
(「イシューからMRへの変換フロー」から改称(18.6~) - GitLab CI/CDへの変換フロー (18.3~): Jenkinsfile を .gitlab-ci.yml に変換
- CI/CDパイプライン修復フロー (18.4~): CI/CD定義の問題で失敗したパイプラインを修復
- コードレビューフロー (18.6~): Duo Code Review の後継としてコードレビューを実行
- SAST誤検出判定フロー(18.7~): トリアージと誤検出抑制を支援
- リポジトリ全体の検索置換を行うフロー
- インシデント対応と根本原因分析フロー
AIカタログ
Duo Agent Platformではこれらの既成のエージェントやフローを自組織に合わせてカスタマイズしたり、新たに作成することも可能です(18.7~)。例えば、テストエンジニアエージェントに自社のテスト手法や基準を学習させたり、独自の業務フローを自動化するフローをゼロから作成することもできます。作成した エージェント や フロー は AIカタログ を通じてチーム内あるいは自社組織内で共有し他チームから再利用することもできます(18.5~)。
カスタムエージェントとカスタムフローにはバージョンを付与することができ、バージョンを指定して利用することができます(18.7~)。
コミュニティ全体に公開して共有する 公開AIカタログ も提供されています。
エージェンティック チャット
GitLab UI 内のパネルやVS CodeなどのIDEから利用できるエージェントモードのAIチャットです。
毎月のアップデートで続々と改善が提供されています。
- エージェント選択 (18.4~)
会話するエージェントを、各種標準提供エージェントやカスタムエージェントをリストから選択できます。 - モデル選択 (18.6~)
ユーザーがLLMのモデルをリストから選択できます。現在、Claude Sonnet/Haiku 4.5、GPT-5.2 などから選択できます。 - セッションの改善 (18.5~)
全てのエージェントとフローのセッションが、エージェンティックチャットのUIで確認できるようになりました。 - 外観と使い勝手の改善 (18.6~)
外観が見やすくなり、ツール実行の承認などの使い勝手も改善されました - オープン標準の agents.md をサポートしました (18.7~)。
外部システムとのシームレス連携
MCPクライアント
MCP (Model Context Protocol) クライアントにより、GitLab DuoのエージェントはJiraやServiceNow、Zendeskといった外部システムに接続し、そこから追加のデータをコンテキストとして取得したり、外部システム上でアクションを実行したりできます。例えば、エージェントがJiraから関連するチケット情報を取得して分析に加えたり、ServiceNowにインシデント記録を自動登録するといった動作も可能になります。
MCPサーバー
GitLabが標準インターフェース (MCP) を提供し、サードパーティ製のAIエージェントや開発支援ツールがGitLabのプロジェクトデータや機能に安全に直接アクセスできるようになります。
これによって、外部のAIコーディング支援ツール等をGitLabと簡単に統合し、リポジトリやイシュー、パイプラインの情報を活用した高度な処理を行わせることができます。
GitLab MCPサーバーが提供するツールは、今後のリリースで順次追加されていきます。
外部エージェント
「CLIエージェント統合」から改称されました (18.6~)。
前述のエージェントフローは、AnthropicのClaude CodeやGoogleのGemini CLIやAWSのAmazon Qといったサードパーティエージェントで実行することもできます。開発者がGitLab上でイシューやMRの担当者/レビュアーにアサインしたり(18.5~)、コメント内でLLMを@メンション(18.3~) すると、そのLLMがコードやその他のコンテキストを自動で読み取り、コード変更の提案やレビューコメントを直接返してくれます。やり取りはすべてGitLab上で行われ、権限や監査ログもGitLab側で管理されるため、安全かつ統制の取れた形でサードパーティLLMの力を活用できます。
モデルのセルフホスト (Duo Self-hosted)
Duo Agent Platformは、ユーザーがGoogle Vertex AIやAmazon BedrockなどのクラウドプラットフォームやオンプレミスでセルフホストするLLMでも動作します(18.4~/実験的)。完全閉鎖環境内に閉じて利用することも可能です。
オンプレミス(vLLM)では、Mistral、Llama、GPT-ossなどが利用可能です。

DuoとSDLCのトレンドダッシュボード
AIインパクトダッシュボードから改称されました (18.4~)。
Duo機能採用、パイプライン性能、デプロイ頻度、平均マージ時間などの6か月トレンド分析や、コード生成量・IDE/言語トレンド、さらに「Agent Platformのフロー採用状況」も観測できます。
現在の提供状況 (18.7時点)
GitLab Duo Agent Platformは現在公開ベータ段階であり、GitLab 18.2から一部の機能が提供され始め、その後の月次リリースで機能が順次追加提供されています。GitLab 18.7時点での提供状況とリリース段階および利用に必要なサブスクリプションは下表の通りです。
2026年1月15日の GitLab 18.8 で GA (一般提供) が予定されています。GA (一般提供) 後の利用には追加費用が必要です。
| カテゴリ | サブカテゴリ | 機能 | リリース段階 | GitLabプラン |
|---|---|---|---|---|
| コンテキスト提供 | ナレッジグラフ | ベータ (18.4~) | 全プラン | |
| エンベディング / セマンティック検索 | ベータ (18.7~) | Premium以上 | ||
| コンテキスト除外 | ベータ (18.4~) | Premium以上 | ||
| エージェントとフロー | エージェント | チャット | ベータ (18.2~) | Premium以上 |
| ソフトウェア開発者 | ベータ (18.3~) | Premium以上 | ||
| プランナー | ベータ (18.5~) | Premium以上 | ||
| セキュリティアナリスト | ベータ (18.5~) | Ultimate | ||
| データアナリスト | ベータ (18.7~) | Premium以上 | ||
| カスタム | ベータ (18.7~) | Premium以上 | ||
| フロー | ソフトウェア開発 | ベータ (18.2~) | Premium以上 | |
| イシュー-MR変換 | ベータ (18.3~) | Premium以上 | ||
| CIファイル変換 | ベータ (18.3~) | Premium以上 | ||
| CI/CDパイプライン修復 | ベータ (18.5~) | Premium以上 | ||
| SAST誤検出判定 | ベータ (18.7~) | Ultimate | ||
| カスタム | ベータ (18.7~) | Premium以上 | ||
| AIカタログ | AIカタログ | ベータ (18.7~) | Premium以上 | |
| エージェントとフローのバージョン指定 | ベータ (18.7~) | Premium以上 | ||
| 外部連携 | Model Context Protocol (MCP) | MCPクライアント | ベータ (18.3~) | Premium以上 |
| MCPサーバー | 実験的 (18.3~) | Premium以上 | ||
| 外部エージェント | アサイントリガー | 実験的 (18.7~) | Premium以上 | |
| Anthropic Claude | 実験的 (18.3~) | Premium以上 | ||
| OpenAI Codex | 実験的 (18.3~) | Premium以上 | ||
| Opencode | 実験的 (18.3~) | Premium以上 | ||
| Amazon Q | 実験的 (18.3~) | Premium以上 | ||
| Google Gemini CLI | 実験的 (18.3~) | Premium以上 | ||
| Agentic Chat | ユーザーのモデル選択 | ベータ (18.5~) | Premium以上 | |
| GPT-5 サポート | ベータ (18.5~) | Premium以上 | ||
| agents.md サポート | ベータ (18.7~) | Premium以上 | ||
| GitLab Web UI | ベータ (18.2~) | Premium以上 | ||
| Visual Studio Code | ベータ (18.2~) | Premium以上 | ||
| JetBrains IDEs | ベータ (18.2~) | Premium以上 | ||
| Visual Studio | ベータ (18.3~) | Premium以上 | ||
| モデルのセルフホスト | Duo Self-hosted | Duo Agent Platformサポート | 実験的 (18.4~) | Premium以上 + Duo Enterprise |
| ガバナンス | モデル選択 | GA (一般提供) (18.4~) | GitLab.com Premium以上 + Duo Enterprise | |
| 標準提供エージェントのオンオフ | ベータ (18.7~) | Premium以上 | ||
| Duo SDLCトレンドダッシュボード | ベータ (18.7~) | Premium以上 |
GitLab Duo Agent Platformは、いよいよ来月一般提供の予定です。1月15日 18.8 のリリースにご期待ください。
GitLab Ultimate + Duo Enterprise を30日間無料でお試しいただけます。下記からお申し込みください。
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