北陸 Tech Boost LT大会に参加してきました!

はじめに

8月2日に富山県民会館にて開催された弊社主催のLT会「北陸 Tech Boost LT大会」に参加してきました。

本LT会では、生成AIの活用方法から、スクラム運営やチームマネジメント、さらには介護経験から得た知見まで、多様で奥深いテーマが語られました。各登壇者が直面している課題や工夫を率直にシェアされておりヒントが数多くありました。本記事では、自分が特に印象に残ったポイントを整理しながら振り返ります。

LT会の様子

生成AIを「触媒パートナー」として捉える

「AIは単なる便利ツールではなく、戦略パートナーとして捉えるべきだ」という視点が提示されました。
生成AIは24時間利用可能で、しかも人間よりも速いペースで試行錯誤を繰り返せる強力な存在です。これにより開発の初動スピードが格段に上がり、学習コストを下げる効果が期待できます。

しかし同時に、「学習が定着しない」「答えの裏が取りにくい」といったリスクも存在します。たとえば、AIの提案を鵜呑みにしてしまうと、チーム内での知識が蓄積されず、後になって同じ議論を繰り返すことになりかねません。重要なのは、AIからの回答をそのまま使うのではなく、「それはドキュメントのどこに書いてある?」と問い直し、根拠を探る姿勢を持ち続けることです。

ドキュメントファーストの開発プロセス

あるチームからは、ClaudeやChatGPTを導入した開発現場で起きた課題が共有されました。
開発の初動はAIの支援によって非常に速く進むのですが、最終的にレビューの段階でストップしてしまい、全体のスループットが上がらないという問題です。レビューの属人化や「同じプロンプトが再利用できない」といった点がボトルネックになっていました。

その解決策として紹介されたのが、「ドキュメントファースト」アプローチです。
要件定義や仕様書を最初に明確に整備し、それをもとに開発を進めることで、レビュー時の議論を減らし、知識をチーム全体に共有可能な形で蓄積できます。コードだけではなく、ドキュメントを先に作る文化を根付かせることが、生成AI時代の新しい開発スタイルであると感じました。

スクラムとチーム運営の工夫

現在地を可視化する

スクラムの進行をより客観的に把握するために、ChatGPTを活用して「ラベル・感じ方・原因・対策」で現在地を検査する手法が紹介されました。これは単にタスク管理をするだけでなく、チームの心理的状態や課題の背景に光を当てる工夫として興味深いものでした。

不安定なチームに立ち向かう

チームが不安定な状態にあるとき、必ずしもスクラムをしているからといって全てがうまくいくわけではありません。むしろ問題は起きるものだと捉え、その上で対話を重視することが必要です。具体的には、PR滞留の削減や、非コーディング業務をメンバー全員で分担する工夫によって、責任感の偏りを防ぎ、チーム全体で開発を推進する体制を整えていました。

スプリントの基本に立ち返る

環境変化によってチームが混乱することは珍しくありません。あるチームでは、部署異動やシニアエンジニアの離脱が重なり、大所帯になったことで、未完了アイテムが増加してしまいました。その状況を打破するために意識したのが、「スプリントに積んだアイテムに責任を持つ」という基本に立ち返ることです。
半日に一度は会話を持ち、レビュー前確認会を設けることで、エピック単位での完了見込みの精度が向上した事例は、自分のチームにもすぐ応用できそうだと感じました。

スプリント運用とその落とし穴

スプリントの期間を「可変」にしてみる実験も紹介されました。1スプリントを2週間として、その中で柔軟に運用してみたものの、結果的にはベロシティが低下し、イベントが形骸化するという副作用が生じたそうです。
この事例から改めて、スプリントは「タイムボックス」であることに意味があると学びました。安易な柔軟性が必ずしも良い結果を生むわけではなく、基本ルールを守ることの重要性を再認識しました。

チームの責任と感謝

介護の現場経験から得た学びをエンジニアリングに重ね合わせた発表も印象的でした。介護もエンジニアリングも、人との関わり合いを前提として成り立っている点で共通しています。
レビューや質問に費やす時間は、短期的には「余計なコスト」に見えるかもしれませんが、実際にはチーム全体の成長に繋がる「未来への投資」です。遠慮やためらいを感じやすい場面でも、勇気を持って質問や意見を投げかけることが、結果としてチームの健全性を高めるのだと感じました。

AIツールの実践的活用

• Copilot体験談:エージェントモードを使い、各AIエージェントのレスポンスを次のエージェントに引き渡す実験が語られました。複数のAIを組み合わせることで可能性は広がりますが、同時に「LLMによるアウトプットを評価する人間の目」が不可欠です。
• AIエージェント開発:OpenAI Agent SDKやBlender、MPCといった技術が紹介され、AIに「何かをさせたい」という強い動機が議論を熱くしていました。これは近い将来、実用的なソリューションに繋がりそうです。

目の前の課題に真摯に向き合う

最後に語られたメッセージは非常にシンプルでありながら強い共感を呼ぶものでした。
「大きな目標という幻想にとらわれず、今目の前にある課題に真摯に向き合うこと」。
未来を逆算して計画することも大切ですが、それ以上に「今必要なことに全力で取り組み、小さな積み重ねを続ける」ことが、結果的に目標達成につながるという考え方です。

これは生成AIの活用やスクラムの進行、チームの責任共有など、LT会で語られた全てのテーマと共鳴しているように感じました。

技術的トピック

Lambda関数URLの便利さと落とし穴

AWSのLambda関数URLの便利さとして、API Gatewayを通さずにHTTPエンドポイントを作れる点が紹介されました。生成AIの回答プロセスのようにストリーミングレスポンスも扱えます。ただしセキュリティ面でWAFをアタッチできないなどの課題もあり、さらにCORSやヘッダー情報の設定不足によるエラーに苦戦した体験談が共有されました。便利さと同時に、運用設計の難しさも実感しました。

OCI Free Tierの活用

Oracle Cloudの無料枠を活用し、期限なしで利用できる範囲を駆使してMakeとRSSを組み合わせ、DifyMakeから受け取った情報をニュースとして投稿する仕組みも紹介されました。コストを抑えつつ、実験的にサービスを構築できる点は個人開発や小規模チームにとって強い味方になると感じました。

まとめ

今回のLT会では、生成AIの新しい活用方法、スクラム運営の工夫、技術的Tips、そしてチームに必要な責任感や感謝の気持ちまで、多角的な学びを得られました。
共通していたのは、「課題を直視し、具体的な対話や試行錯誤を繰り返すこと」です。机上の理論だけでなく、実践から得たリアルな知見が多かったことが非常に刺激的でした。

自分の現場にどのように取り入れられるか、試していきたいと思います。

Author

クラウドに興味があります。
音楽と走ることが好きです。

SugiyamaHarukiの記事一覧

新規CTA