AWS AppConfigで Feature Flag

Feature Flagとは?
ソフトウェア開発において、新機能のリリースをコントロールする仕組みの1つとしてFeature Flag(フィーチャーフラグ)というものがあります。
ソフトウェア開発では、新しいコードを本番環境にデプロイするときにすべてのユーザーが一度に利用開始するのが従来のやり方でした。でも、それだと不具合があった場合に全ユーザーが巻き込まれるリスクがあります。従来の「コードを本番にデプロイしたら全ユーザーが一斉に利用開始」という方式から脱却し、リリースのリスクを最小化しながら段階的にユーザーへ展開できます。
AWSにはネイティブのFeature Flagソリューションである AWS AppConfig Feature Flags があり、セーフティガード付きで本番環境への新機能リリースを支援します。
従来のリリース手法と課題
従来のリリースプロセスは以下の流れでした。
- 機能を実装
- QA環境でテスト
- マーケティングのスケジュールに合わせて本番へデプロイ
リリース当日は「一斉公開」になるため、もし不具合があれば全ユーザーが即座に影響を受けるリスクがあります。この「push-and-pray deployment(祈りのデプロイ)」では、運用チームが緊張しながらメトリクスを監視することになります。
Feature Flagによるモダンなリリース
Feature Flagを導入すると、コードと設定を分離できます。
- コードは本番にデプロイするが、機能はフラグで隠しておく
- 内部ユーザーや特定の顧客にのみ機能を限定公開
- モニタリングしながら段階的に公開範囲を拡大
- 問題がなければ最終的に全ユーザーへ展開
これにより、安全かつ計測可能なリリースが実現します。
Feature Flagの主なユースケース
Feature Flagには用途に応じた種類があります。
- リリースフラグ
新機能を段階的に展開し、安定性を確認しながら全ユーザーへリリース。 - 実験(A/Bテスト)フラグ
UIやアルゴリズムの複数バージョンを比較し、データに基づいた意思決定を可能にする。 - 運用フラグ
同時処理数やスロットル値などを設定し、負荷や障害時に即時調整できる。
AWS AppConfig Feature Flagsの特長
AWS AppConfigを用いると、以下の安全機能を備えたFeature Flag運用が可能です。
- バリデーション
- フラグの値に制約(数値の最小・最大値、正規表現、列挙型など)を設定し、誤った設定が本番環境に流れないよう防止
- 値に制約(例: 数字の範囲、日付の形式など)を付けられるので、間違った設定が本番に入らない
- デプロイ戦略
- フラグの更新を一気に反映するか、カナリアリリース/段階的リリースで徐々に展開するかを選択可能
- 「10%のユーザー → 50%のユーザー → 全員」というように少しずつ公開できる
- 自動ロールバック
- CloudWatchアラームが発火した場合、更新が自動的にロールバック
- 障害時の対応を迅速かつ自動的に実施することができる
- 高度なターゲティング
- ユーザーIDや顧客層ごとのターゲティング、トラフィックスプリットによる細かな制御が可能
- 特定のユーザーや顧客層だけに新機能を提供することが可能
こうした制約により、安全な設定管理が可能です。
運用のベストプラクティス
1. カナリアリリースを活用する
新機能をいきなり全ユーザーに公開するのではなく、まずはごく一部のユーザーにだけ展開して挙動を確認する方法がカナリアリリースです。これにより、問題が発生した場合は影響範囲を最小限に抑えられます。もし異常が検知されたら、Feature Flagを即座にOFFに切り替えることで、安全に機能を停止できます。
2. 監視ツールとの連携で異常を検知
Feature Flagの切り替えは便利ですが、常に安全とは限りません。そこで重要なのが監視との連携です。AWS CloudWatchやDatadogなどのモニタリングサービスと連携させて、レスポンス時間やエラーレートといったメトリクスを監視しましょう。異常値を検知したら自動的にアラートを発砲し、必要に応じてロールバックやフラグOFFに即応できます。
3. JSON Schemaによるバリデーション設定
Feature Flagの設定内容に誤りがあると、本番環境で予期せぬ挙動を引き起こす可能性があります。そこで役立つのがJSON Schemaによるバリデーションです。例えば「割引率は0〜50の範囲内」「日付はYYYY-MM-DD形式」といった制約を設定しておくことで、不正な値が適用されることを防げます。結果として、運用の安全性が大幅に向上します。
4. 環境ごとの管理で安全性を高める
最後に、環境ごとの管理も忘れてはいけません。開発環境(dev)、ステージング環境(stg)、本番環境(prod)を分けて管理し、必ず本番前に十分なテストを行うことが重要です。Feature Flagも環境ごとに切り替えを制御することで、リリース前にリスクを検証し、安心して本番適用できます。
まとめ
Feature Flagは、「デプロイ」と「リリース」を分離するモダンな開発・運用手法です。
カナリアリリース・監視・バリデーション・環境分離を組み合わせることで、安全かつ信頼性の高いFeature Flag運用が実現できます。
AWS AppConfigを利用すれば、
- セーフティガード付きでの安全なリリース
- 段階的な機能展開
- ユーザー層ごとの精密なターゲティング
を実現できます。従来の「祈りのデプロイ」から脱却し、計画的かつ信頼性の高いリリース戦略を構築していきましょう!