タスク管理の不安を減らすためにプライベートスクラムをやってみた!

はじめに
プライベートスクラムをやろうと思った経緯
「やらなければならないことが多すぎる!」
「TODOで管理しているのに、うまく消化できない!」
社会人として働き始めると、目の前のタスクをこなすだけでなく、こんな判断も求められます。
- このタスクは、自分にとってどれくらい重いのか
- 100%を目指すべきか、80%で十分ならどこまでやるのか
- 自己学習にどれくらい時間を使うべきか
自分がどれくらい進められるのか分からず、限られた時間の中で奮闘している方もいらっしゃるのではないでしょうか。まさに入社3ヶ月の私は、そんな社会人がぶつかる悩みに直面していました。慣れない新生活の中で、「組織人として本当にやっていけるのだろうか」と、研修中から不安を感じていました。
「今日も予定していたタスクが全然終わらなかった…」
新卒研修が終盤に近づき、自分のために使える時間が増えた一方で、「このまま現場に配属されて、次々と業務を任されたらパンクしてしまうのではないか」という不安も大きくなっていきました。
そこで思いついたのが、チーム開発で学んだスクラムの考え方を個人のタスク管理に応用する「プライベートスクラム」でした。新卒ならではの不安や試行錯誤をそのまま材料にして、自分のタスク管理を少しずつ改善してみようと考えました。
ただ、スクラム経験の浅い私が1人で進めるだけでは、客観的な視点が足りず、スクラムの良さを十分に活かしきれないのではないかと感じました。そこで、アジャイルの知見が豊富な先輩である中村さんに1on1を依頼し、スプリントの振り返りや進め方の相談に乗っていただくことにしました。
この記事では、タスク管理に悩む新卒が、先輩に伴走してもらいながら「3日ごとの短いスプリント」を3回回してみた記録を紹介します。
スクラム開始
開始時点の自己評価は、100点満点中20点でした。やるべきことは把握していたものの、自分がどれくらいできるのか、どう見積もればよいのかが分からなかったためです。
スクラムを回すうえで、自分がどこを目指しているのかを見失わないことは大切です。そこで今回は、最初に「プロダクトゴール(目指す姿)」を決めてから、各スプリントで何に取り組むかを考えることにしました。
まずは、今回の取り組みで目指したプロダクトゴールです。

最終目標は、配属されて多くのタスクが舞い込んできた時にも、自分のキャパシティを考慮しながら対応できる状態になることです。
チームで行うスクラムをそのまま再現するのではなく、このゴールに近づくために、個人のタスク管理に合わせてルールを調整しました。
この記事では、次の順番で整理します。
- どのようにプライベートスクラムを進めたのか
- 3回のスプリントで何が変わったのか
- 取り組み全体として、どんな効果と課題があったのか
1. 今回試したプライベートスクラムの進め方
今回の取り組みでは、PBL(Project Based Learning)で経験したスクラムを参考にしながら、個人で回しやすい形に変えて進めました。
スプリント期間
スプリントは、3日間 × 3回にしました。
1週間単位で計画すると、研修予定や割り込みの影響を受けやすいと感じたためです。技術研修の成果発表会をひとつの区切りとして、それまでに自分なりのタスク管理のリズムをつかむことを目指しました。
イベント
- デイリースクラム:毎朝8時に「昨日やったこと」「今日やること」「障害物」を書き出しました。
- スプリントプランニング:スプリントごとにゴールを決め、取り組むタスクを整理しました。
- レトロスペクティブ:スプリントの終わりに、中村さんと振り返りを行いました。
チーム開発では、障害物を「チームがスプリントゴールに近づくうえで妨げになること」として扱っていました。今回は個人での取り組みなので、自分がスプリントゴールを達成できなさそうな要因を障害物として扱うことにしました。
なぜなら、個人で取り組む場合はチーム内の認識のズレや連携不足による障害物は起きにくい一方で、自分の見積もりの甘さや優先順位の迷いが、スプリントゴール達成の妨げになりやすいと考えたからです。
使ったツール
ツールはFigJamを使いました。毎日のタスクやゴールを可視化し、中村さんとの同期・非同期の共有ボードとして活用しました。
付箋で質問や気づきを残せるため、1on1の時間だけでなく、非同期でもアドバイスをいただきやすかったです。個人で進める取り組みでありながら、第三者が状況を把握しやすい点が、今回の進め方と相性がよいと感じました。
実際にいただいたアドバイスの一部です。

2. 3回のスプリントで起きた変化
ここからは、3回のスプリントで起きた変化を振り返ります。各スプリントについて、「計画」「結果」「学び」の順に整理します。
スプリント1:達成度20点からのスタート
計画
最初のスプリントゴールは、1スプリントでこなせる量を把握することにしました。計画時点では、合計21ポイント分(タスクの重さを相対的に表す単位)のタスクを入れていました。
結果
実際に完了できたのは5ポイントでした。しかも、すべて1ポイントの小さなタスクです。
プランニングの時点では、3ポイントや5ポイントのタスクも進められそうだと思っていました。しかし実際には、完了条件が曖昧だったり、使える時間に対してタスクの粒度が大きすぎたりして、思うように進みませんでした。
特に3ポイントのタスクは、自分の考えを整理しないと前に進めないものが多く、想像以上に時間とエネルギーが必要でした。その結果、「完了したと言い切れないから、できなかった」と感じてしまいました。
学び
自分の見積もりと、実際に消化できる量には大きな差があると分かりました。
「これくらいできるはず」という感覚だけで計画するのではなく、まずは今の自分がどれくらい進められるのかを知ることが大切でした。また、3ポイントのタスクであっても、着手に時間がかかりそうなものは、1ポイント程度の粒度まで分ける必要があると感じました。
スプリント2:マストに絞ってゴール達成
計画
スプリント1の反省を踏まえ、スプリントゴールは、優先度の高い上位2つのストーリーに集中することにしました。
また、タスクを先に並べるのではなく、受け入れ条件(完了と判断する条件)から逆算してタスクを考える順番に変更しました。
結果
少し時間はかかったものの、注力すると決めた上位2つのストーリーを完了できました。スプリントゴールも達成でき、スプリント1とは違う手応えがありました。
学び
未完了のタスクを、そのまま次のスプリントに引き継がないことが大切だと分かりました。
前回できなかったタスクを大きなまま残すと、「また達成できなさそう」と感じてしまいます。次のスプリントで扱うなら、今の自分が着手しやすいサイズまで分け直す必要がありました。
スプリント1のとき、私は「計画したタスクはすべて完了しなければならない」と考えていました。そのため、研修スケジュールや割り込みで計画が崩れると、完了チェックがつけられず、「できなかった」と落ち込んでいました。
そんな私に、中村さんは次のようにアドバイスをくれました。
タスクをこなすこと自体が目的ではない。
本来の目的であるプロダクトゴールやスプリントゴールの達成が重要で、手段であるタスクは状況に応じて柔軟に変えてよい。
プランニングの際も、「このスプリントゴールはプロダクトゴールの達成に近づくものか」を何度も確認していただきました。そのおかげで、ゴールから逆算して考える感覚が少しずつ身についていきました。
スプリント1では「ストーリー → タスク → 受け入れ条件」の順で考えていましたが、スプリント2からは「ストーリー → 受け入れ条件 → タスク」の順で考えるようにしました。これにより、目的と手段を切り分けやすくなりました。
その結果、「あれもこれもやらなきゃ」という焦りが減り、本当に重要なものに集中できました。
スプリント3:フィードバックが必要なタスクを分ける
計画
最後のスプリントでは、実際の業務で起こりそうな割り込みや予定変更を想定し、あえてバッファを持たせることにしました。
また、「おまけタスク(余裕があれば取り組むタスク)」は入れず、マストタスク(必ず完了したいタスク)だけで計画しました。配属後は、自分の作業だけでなく、急な相談や予定変更にも対応する必要があるはずなので、より実際の業務に近い形を意識しました。
結果
予定していたマストタスクのうち、第三者にフィードバックをもらう予定が直前でなくなりました。そのため、マストタスク全体としては完全な達成には至りませんでした。
学び
1人で完結できるタスクと、第三者のフィードバックが必要なタスクは、分けて管理した方がよいと分かりました。
「第三者からフィードバックをもらう」というタスクは、相手のスケジュールや状況に左右されます。これを自分の完了条件に含めてしまうと、自分がどれだけ進めても、外部要因によって未達成になってしまう可能性があります。
そこで中村さんから、完了条件を2段階で考える方法についてアドバイスをいただきました。
- 第1段階(自分にできること):まずは自分だけでコントロールできる作業を完了する。
- 第2段階(他者が関わること):そのうえで、第三者の意見やフィードバックをもらい、別タスクまたは次のスプリントで改善する。
この考え方を知ったことで、配属後も「自分がやるべきこと」と「他者の協力が必要なこと」を分けて管理できそうだと感じました。
3. 全体の結果と残った課題
3回のスプリントを通して、開始時点で20点だったプロダクトゴールの達成度は、最終的に70点まで上がりました。
スプリントを重ねる中で、タスクをストーリー単位で捉えること、ポイントを使って重みを考えること、自分がどこまでできるのかを言語化することに慣れていきました。
特に、次の3つを判断しやすくなったと感じています。
- 自分は1スプリントでどれくらい進められるのか
- 今回のマストは何か
- どこから先は第三者のフィードバックが必要なのか
ただ、点数が上がったこと自体は副次的な結果です。大きかったのは、タスクに追われて焦るだけだった状態から、「今の自分は何をどこまでできるのか」「次に改善するならどこか」を落ち着いて考えられるようになったことでした。
残りの30点
一方で、プロダクトゴールを完全に達成できたとは言い切れません。

今回扱ったタスクは、技術的な実装よりも、研修中に得られる効果を最大化するための内省的なタスクが中心でした。そのため、実際の業務に近い形で手を動かす経験はまだ十分ではありません。
また、どこまでできればプロダクトゴール達成と言えるのかを事前に定義しきれていなかった点も、次に改善したい課題として残りました。
4. 取り組み全体で感じた効果と改善点
3章ではプロダクトゴールに対する結果を整理したので、ここでは取り組み全体を通して感じた心理的な効果と、次回に向けた改善点をまとめます。
効果のあったこと
1. プロダクトゴールに向かって進んでいる実感を持てた
スプリントゴールを決める際には、必ずプロダクトゴールを隣に置き、「このスプリントゴールはプロダクトゴールの達成に近づくものか」を毎回確認しました。
これは、中村さんが振り返りの中で繰り返し促してくださったことです。スプリントゴールを何にするか迷ったり、「これで本当にいいのだろうか」と不安になったりしたときには、「このスプリントゴールを達成できたら、プロダクトゴールの達成に近づけそうか」という視点で考えるとよい、とアドバイスをいただきました。
実際に進めてみると、私はついやることを先に並べてからスプリントゴールを立ててしまいがちでした。そのため、プロダクトゴールを見ながらスプリントゴールを考える習慣は、「自分がプロダクトゴール達成にに足りていない部分はどこか」を自発的に考える癖がついたのでとても効果的でした。
期間が限られている中でスプリントゴールを設定するのは少し難しかったです。それでも、一気にゴールを達成しようとするのではなく、その途中にある小さな目標をスプリントゴールとして立てることで、自分がなりたい姿に向けて少しずつ進んでいる実感を持てました。
2. できなかったことより、できたことに目を向けられた
以前はTODOリストを使っていても、達成したものは打ち消し線で消えていき、未完了のものばかりが目に残っていました。そのため、実際には進んでいても「まだこれも終わっていない」と考えがちでした。
一方で、デイリースクラムやレトロスペクティブでは「できたこと」が記録として残ります。マストタスクに集中するようにしたこともあり、「できなかった」と落ち込む場面が減りました。
また、デイリースクラムで「昨日やったこと」を書き出すことで、自分が前に進んでいることを確認できるようになりました。漠然とした不安ではなく、「昨日の自分と比べて何ができるようになったか」に目を向けられるようになったのが大きかったです。
3. 見てくれている人がいる安心感があった
業務時間外にFigJamを見返していた時、中村さんも同じようにFigJamを開いていて、付箋でコメントをくださったことがありました。1人で取り組んでいるようで、実際には伴走してもらえている感覚があり、とても励みになりました。

次回に向けた改善点
1. 達成基準を事前に定義する
今回の取り組みでは、「どの状態になれば達成と言えるのか」という基準が少し曖昧でした。
次回は、たとえば「バッファを持ってプランニングし、計画したポイントを1ヶ月連続で安定して消化できる」のように、数値や具体的な状態で達成基準を決めておきたいです。そうすることで、振り返りの時にも「どこまでできたのか」「何がまだ足りないのか」を判断しやすくなると感じました。
2. 伴走の範囲を絞る
伴走していただくことで得られる安心感は大きかった一方で、毎回しっかり振り返るには、相談に乗ってくださる方の時間も必要になります。
今後は、すべてのスプリントを一緒に振り返るのではなく、スプリントがうまく回せていない時や、大きく計画を見直したい時に相談する形にすると、安心感と継続しやすさのバランスを取りやすくなりそうです。
5. チームでのスクラムとプライベートスクラムの違い
今回の取り組みを通して、チームで行うスクラムと、個人で取り入れるプライベートスクラムには、それぞれ違った良さがあると感じました。
| 観点 | チームでのスクラム | プライベートスクラム |
|---|---|---|
| プロダクトゴール | チームでプロダクト価値を高める | 自分の不安を減らし、自己管理力を高める |
| 視点 | 複数人の視点でプロダクトや進め方を改善できる | 自分の状態やキャパシティを深く観察できる |
| 障害物 | チームがスプリントゴールに近づくうえで妨げになることを扱う | 自分がスプリントゴールを達成できなさそうな要因を扱う |
| 振り返り | チーム全体の進め方や認識のズレを改善する | 自分の見積もり、タスクの抱え方、思考の癖を改善する |
| 達成感 | チームで成果を出せた喜びがある | 「自分でも前に進めた」という自己肯定感につながる |
| 難しさ | 認識合わせや調整が必要になる | 客観的な視点が不足しやすい |
チームのスクラムがチームで価値を届けるための仕組みだとすると、プライベートスクラムは自分のうまくいった行動やつまずき方を振り返り、自分をより深く知りながら、なりたい姿に近づくための仕組みなのだと感じました。
おわりに
プライベートスクラムは、自分との対話を通じてタスクを進めるうえで、とても効果的でした。ただTODOを消化するのではなく、「何を目指しているのか」「今の自分はどこまでできるのか」「次に何を改善するのか」を、短いサイクルで何度も見直せたからです。
また、中村さんに伴走していただいたことで、1人では気づけなかった視点を得たり、実際の現場でありがちな判断を学んだりしながら、スクラムの良さを活かしてスプリントを回すことができました。本当にありがとうございました。
新卒として、できなかったことだけに目を向けるのではなく、「できたこと」で自己肯定感を上げつつ、伸びしろを最大限活かせるように、これからも改善を続けていきます!
同じようにタスク管理や見積もりに不安を感じている方がいたら、プライベートスクラムを試してみるのもいいかもしれません。「こんなやり方もよかったよ」という工夫や、このブログを読んで思いついたアクションのアイデアなどがあれば、ぜひ教えていただけると嬉しいです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
