三人のレンガ職人から学ぶ、アウトカム志向と内発的動機づけ

最近、「三人のレンガ職人」という古い逸話をあらためて思い返す機会がありました。同じレンガ積みの仕事をしていても、3人がそれぞれ全く違う答えを返す、あの話です。プロダクト開発の現場でアウトプット・アウトカム・インパクトという言葉を扱うようになってから、レンガ職人の逸話もこれらの言葉で表現できるのではと思うようになってきました。
この記事では、「三人のレンガ職人」の逸話をアウトプット・アウトカム・インパクトのバリューチェーンにマッピングしてみます。合わせて、どんな志向で仕事をするとモチベーションが長続きするのかを考えてみます。
「三人のレンガ職人」の逸話
「三人のレンガ職人」。実は出典は定かではありませんが、仕事への向き合い方を考えるときに引き合いに出される逸話です。
ある旅人が三人のレンガ職人それぞれに「何をしているの?」と声を掛けます。
この話に出てくる三人のレンガ職人は、三人とも『レンガを積む』という、全く同じ仕事をしています。そしてそれぞれが下記のように回答をします。
1人目:「見ればわかるだろう。レンガ積みをしているんだ。朝から晩まで、俺はここでレンガを積まなきゃいけないのさ。雨の日も寒い日もどんな時も一日レンガ積みさ。体もボロボロさ。」
2人目:「オレは、ここで大きな壁を作っているんだ。これがオレの仕事でね。この仕事のおかげで俺は家族を養っていける。」
3人目:「歴史に残る偉大な大聖堂をつくっているんだ。ここで多くの人が祝福を受け、悲しみを払うんだぜ!素晴らしいだろう!」
バリューチェーン:アウトプット〜アウトカム〜インパクト
プロダクト開発の文脈では、アウトプット・アウトカム・インパクトは「価値の連鎖(バリューチェーン)」として捉えられます。エビデンスベースドマネジメント(EBM)では、以下のように整理されています。
| 名称 | 定義 | 例 |
|---|---|---|
| インプット | 組織がお金をかけるもの | チームが費やせる金額、コストなど |
| アクティビティ | 組織において人々が行うこと | ミーティングへの参加、コードの記述など |
| アウトプット | 組織が作成するもの | プロダクトや新機能のリリース、レポートなど |
| アウトカム | 顧客やユーザーが体験する成果 | 以前より速く目的地に行けるようになった、など |
| インパクト | 組織や投資家が達成する結果 | 収益や利益の増加、市場占有率の向上、など |
これを図で表すと以下のようになります。なお図では、インパクトをビジネスインパクト(組織が享受するもの)と社会的インパクト(社会的に影響を及ぼすもの)に分けています。

三人の職人をバリューチェーンにマッピング
それでは、冒頭の「三人のレンガ職人」をバリューチェーンに当てはめてみます。
以降のマッピングでは、内発的動機づけ・外発的動機づけというキーワードも出てきます。これらの概念については、以下のドキュメントも合わせて読んでみてください。
1人目:アウトプット志向
1人目の職人は「レンガを積む」という作業そのものしか見えていません。つまり、アウトプット(&アクティビティ)志向です。仕事がアウトプットで完結しているため、何のためにやるのかという意味づけがなく、モチベーションが下がりやすい状態です。

2人目:(ビジネス)インパクト志向
2人目の職人は「家族を養う」ことを動機にしています。仕事そのもの(アウトプット)ではなく、その先にあるビジネスインパクト(収入)を見ています。金銭的なインセンティブという外発的動機づけがある分、1人目よりは安定しているかもしれません。ただし、外発的動機づけには以下の注意点があります。
- 報酬がなくなると、やる気も消える
- アンダーマイニング効果:もともと仕事に面白さを感じていたとしても、報酬が絡むことで「やらされ仕事」に感じるようになり、内発的なモチベーションまで損なわれる

3人目:アウトカム & (社会的)インパクト志向
3人目の職人は「多くの人が祝福を受け、悲しみを払う場所をつくる」というアウトカムと社会的インパクトを見ています。顧客(礼拝者)が体験する成果と、最終的に「歴史に残る偉大な大聖堂」に至るという、社会に与える意義まで視野に入っています。これは内発的動機づけ、つまり目的や貢献感から来るモチベーションです。外から与えられる報酬に依存しないため、長続きしやすく、仕事への熱量も自然と高くなります。

もっとも、現実は3人の職人のように、単純に一つの志向にマッピングできるわけではありません。アウトカム志向が内発的動機づけに有効とは言え、仙人のように霞を食べて生きているわけではないので、ある程度のビジネスインパクト(収入)は当然必要です。また、職人気質の人は、いいアウトプットを作れること自体に喜びを感じることもあります。
一つの志向に偏り過ぎるのではなく、自分たちの組織・チームの状況や特性を考慮しながら、バランスよく向き合っていきましょう。
