アウトカム志向を加速する!インパクトマッピング+αのすすめ

今日は、目的と施策のつながりを一枚絵で可視化できる「インパクトマッピング」と、インパクトマッピングを改善した派生形をいくつか取り上げます。

「施策をどう実現するかを考えているうちに、施策が実現した際の価値が疎かになってしまっている…」そんなモヤモヤを解消するヒントになれば幸いです!

インパクトマッピングとは

インパクトマッピングは、ゴイコ・アジッチが提唱した、次の4階層から成るシンプルなマッピング手法で、以下の特徴があります。

  • 一連の因果関係を、上位のアクターやインパクトから考えていきやすく、末端の成果物ありきになりにくい
  • アクターやインパクトが複数出てきても、「このアクターの、このインパクトが、この成果物につながっている」という関連が分かりやすい

インパクトマッピング自体は、書籍や各所での紹介記事も多いので、そちらも参考にしてみてください。

インパクトマッピングの種類

拡張インパクトマッピング

実はインパクトマッピングを最初に知ったとき、何か違和感があって、うまく活用できていませんでした。そのまましばらく忘れていたのですが、以下の記事の引用部分を読んだときに、当時感じた違和感が言語化されているのと同時に、改善された拡張インパクトマッピングの可能性を大きく感じました。

私たちが発見したのは、「アクター」が達成しようとしている「アウトカム」が欠けていたということです。「インパクト」こそが私たちが達成したいものですが、その結果を達成するためには、顧客が望むアウトカムを達成できるよう支援する必要があります。

インパクトマップを微調整すると同時に、ユーザーや顧客、そして彼らが達成しようとしているアウトカムについて話すときに使用してきたユーザーエクスペリエンス (UX) モデリング用語との整合性を高めたいと考えました。そこで、「アクター」という用語を「ペルソナ」に変更し、「成果物」という単語を「PBI (プロダクトバックログアイテム (PBI)」の略で、スクラムチームが使い慣れている用語) に変更しました。そして、アウトカムを追加しました。

Extending Impact Mapping to Gain Better Product Insights | Scrum.org

拡張インパクトマッピングのサンプルを、以下に紹介します。EBMの書籍紹介ブログで戦略的ゴールマップを紹介しましたが、そのゴールマップがほぼ同じフォーマットなので、このときのマップを簡略化しつつ拡張インパクトマッピング形式で表してみたものです。

従来のインパクトマッピングにおけるインパクトにおいて、ごちゃまぜになって判別しにくかった以下の2点が、それぞれ分離されたことによって認識しやすくなっているかと思います。

  • 顧客アウトカム:アクター(顧客やユーザー)にとっての望ましい成果
  • ビジネスインパクト:ゴールを達成したいと考えている人が望んでいる結果

冒頭のインパクトマッピングにおける「既存会員 > 友人にシェアする」は、拡張インパクトマッピングにおけるインパクトになりそうですね。「友人にシェアする」こと自体は、アウトカム:アクターにとっての成果ではないので。アウトカムとしては「同じ趣味・分野で話せる人が増える」だったり、直接的な金銭面だと「紹介料がもらえる」だったりするでしょう。

VPC型インパクトマッピング

続いては、VPC(バリュープロボジションキャンバス)型インパクトマッピングを紹介します1。この形式では、インパクトの部分を詳細に、バリュープロポジションキャンバスでのジョブ / ゲイン / ゲインとして扱えるのが特徴です。

VPC型インパクトマッピングは、Scrum.orgが提供している研修「Professional Product Discovery and Validation™ Training」(日本語での研修紹介はアゴラックス社のページより)通称PPDV研修で紹介されていました。講師の許可をいただいた上で、研修資料内の図を翻訳して掲載します。

VPC型インパクトマッピングでは、顧客アウトカム(を細分化したジョブ / ゲイン / ペイン)を扱うことが明確になっています。そのため、拡張インパクトマッピングと同様に、「アウトカムなのか、インパクトなのかが判別しにくい」という従来型であった問題点は改善されています。

各インパクトマッピングの特徴と使い分け

私がインパクトマッピングを実践する際は、場面に応じて多少の使い分けを行っています。

名称特徴・利用に適した場面
拡張インパクトマッピングEBMにおけるアウトカム / インパクトを一緒に考えることができ、相性がいい
経営層やビジネス側のメンバーと議論する際に、チームが取り組む作業と、それが自組織に与えるインパクトとの関連性を考えやすい
VPC型インパクトマッピングジョブ / ゲイン / ペインという形で、ユーザーにとっての価値を深掘りして捉えることができる
UXデザイナや開発チーム主体のワークで考えやすい

今まで試したことはありませんが、両方同時に扱うこともできるかもしれませんね。その際は、マップが複雑になりすぎて「視覚的にインパクトのつながりを捉えやすい」というインパクトマッピングの特徴を損なわないように気をつける必要がありそうです。


今回は、インパクトマッピングの基本形と、そこからの派生形についての紹介を行いました。

私の実際の利用シーンでは、ビジネスモデルを検討するリーンキャンバス / ユーザーのフローを俯瞰しながら優先順位を決定するユーザーストーリーマッピングと組み合わせることも多いです。アウトカムについての認識を合わせる際に、インパクトマッピングはシンプルながらも強力なツールなので、みなさんぜひ活用してみてください!

脚注

  1. 「VPC型インパクトマッピング」という命名は、便宜上私個人が名付けたものです。Scrum.orgはじめ、他の場所でこういう呼び方をされているわけではありませんので。 ↩︎

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