SHIFT Agile FES 2025 登壇レポート

1. テーマは「People-Centric Agile : Crafting Quality」

SHIFT社が掲げたキーワードは “人間中心のアジャイルでこそ実現できる品質”。

最近は減ってきたが、うちは品質にこだわりがあるのでアジャイル開発は採用できないのです、という事業会社の方々もいて、そのたびに「いや、そうじゃないんですよ〜」という話をよくしていたこともあり「アジャイルだからこそ実現できる品質がある。」とテーマにとても共感しました。

2. 会場は麻布台ヒルズ32階

5月17日、麻布台ヒルズ森JPタワー32階にあるSHIFT本社で開催された SHIFT Agile FES 2025 に登壇者として参加してきました。

(写真は全講演後の集合写真)
アジャイルカンファレンス「Agile Japan」のサテライトとして企画され、オンライン配信とのハイブリッドで総勢470名超がエントリーされた熱量の高いイベントでした。

3. 及川卓也さん基調講演「生成AI時代における人間の情熱とプロダクト志向」

朝一番のキーノートは、及川卓也さんによる「生成AI時代における人間の情熱とプロダクト志向」でした。 生成AIの効率性を前提にしつつも、最終的な価値創造は “情熱を持った人間同士の真剣勝負” が生むというメッセージに深く共感しました。

  • 生成AIは副操縦士から“信頼できる相棒”へ
  • プログラミングの本質は抽象化と価値創造
  • 「AIがコードを書く世界でも、プロダクトが誰の何のためにあるかを語れないエンジニアは淘汰される」
  • エンジニア像は二極化するー“AI活用型”と“AIに任せられない高度専門家”。中間層は再定義を迫られる。
  • 情熱駆動開発 ― AIを「使う」が「使われない」自律性が、これからのエンジニアリング組織を分ける。

生成AI活用が加速しても、Whyを描き抜く人間の意思は代替されないということで、Co-Creation Sherpaで顧客のWhyに伴走する私たちにとって、大きな追い風を感じる内容でした。 また、プロダクトマネジメント領域でのAI活用事例を交えながら価値創出にフォーカスしていくことは、私たちのテーマとして掲げている「Co-Creation Sherpa:顧客のWhy(本当に実現したいこと)に寄り添い、IT技術によるイノベーションにより価値創造を実現する」にもシンクロしており、及川さんの熱い言葉の一つひとつに背中を押されるようで、勇気をいただくことができました。

また、及川さんとはイベントの懇親会でも少しお話しする機会をいただき、MCPの活用や今後のSaaSプロダクトの方向性など、非常に示唆に富むお話を伺え、多くの気づきを得ることができたのも、とてもありがたいことでした。

4. 吉羽龍太郎さん × 秋葉啓充さん対談「Kent Beckの思想と学びの道筋」

午後イチのセッションでは、Kent Beck氏の思想を紐解くというテーマで、吉羽龍太郎さんとSHIFTの秋葉啓充さんによる熱い対談が繰り広げられました。 秋葉さん命名の「日本のアジャイル界隈のラスボス吉羽さん」(私もそう思いますw)へ様々な疑問が投げかけられ、吉羽さんがそれらに華麗かつ豪快に打ち返していく展開がとても小気味よく、45分があっという間に感じられました。

  • 進捗レポートではなく、動くものを顧客に見せ続ける。実物から安心感を生み、信頼を得る。
  • 吉羽さんに影響を与えた一冊は『トヨタ生産方式』。
  • 「与えられたプロセスを守る」のではなく「自分たちのプロセスを自分たちで磨く」。
  • メンバーが転職できるまで訓練し、転職したくないと思えるほどの報酬を出す。

チームが主体的にリチームし続けるという話などは、私たちが事業運営の際に強く意識している「透明性→検査→適応」と重なるものがあり、とても共感しました。

5. 小野和俊さん × 山﨑賢さん――「トップエンジニアが語るDX最前線」

午後は、クレディセゾンCTOの小野さんとイオンCTOの山﨑さんの対談でした。 「動ける組織をどう育てるか」「エンジニアのモチベーションをどう保つか」といった等身大の議論が展開され、私自身もエンジニアの方々を率いる経営者として、大きく頷く場面が多々ありました。

  • DXも最初は個人依存で良い。個人技によって大規模プロジェクトの課題や重要なバグを解決できることがある
  • 過去をリスペクトして未来に編んでいくエンジニアリング
  • スペシャリストを型にはめるのはよろしくない
  • 内製化はキラキラしたものではなく、大きな責任を伴うもの

私たちにとっては顧客側にあたる事業会社の技術トップの方々の率直な会話は、非常に参考になったと同時に、このような方々が全ての事業会社にいらっしゃれば、日本のビジネスはもっと良くなるだろうな、としみじみ感じました。

6. 池ノ上さんとの対談――幸せに働ける組織を目指すリーダーの葛藤と挑戦

そして私が、SHIFT社VPoEの池ノ上倫士さんと登壇した対談セッションです。 テーマは「幸せに働ける組織を目指すリーダーの葛藤と挑戦」。 対談に先立って池上さんとは数回リモートでディスカッションし、さらには一度“飲みニケーション”を敢行。お互いの価値観などを把握していたおかげで、本番では意図を察し合いながらテンポよく深掘りトークができました(聴講者の方々やXの反応を見ても、そう言って良いかと思っています^^)。 このセッションの中で、私たちが挑戦しようとしている成果報酬型サービス開発(Co-Creation Startup)の件についても、想いも含めて共有できました。

今回のセッションの裏テーマは、「できる限り生々しい話をシェアして、聴講者の方たちが今後直面するであろう危機の際に、一歩踏みだす勇気を与える」ということでした。 講演後のAsk The Speakerにも10名以上の方々が来てくださり、多くの方々から「今、安田さんが体験された失敗と非常に似た境遇なので、何かアドバイスをください!」「チーム内で色々課題があって悶々としていたのですが、明日からアクションしていこうという気持ちになりました」などとお声がけいただきました。 このことから、弊社および私自身がこれまで経験してきた成功例・失敗例を“赤裸々に”シェアできたのではないかと思っています。

(Ask The Speakerにきていただいた方々との記念写真)

7. リアルイベントの良さは“新しい偶然の出会い”

印象的だったのは、Ask the Speakersで声をかけてくださった若手リーダー(プロダクトマネージャー&スクラムマスター)の方から「お昼をご一緒しませんか?」と誘われたことでした。 カフェテリアで近況を伺っていると、年代はかなり違うものの、境遇として近いものがあったり、家庭に関する考え方にもとても共感しました。 仕事面でもご一緒する機会に繋がりそうな話もでき、リアルイベントは偶然の出会いの機会を創出し、新しい関係性を育む場でもあると再認識しました。

8. アンカンファレンス――セッションの合間のOST

ランチタイムや各セッションの合間に30分間×3回実施されたアンカンファレンス(テーマフリーディスカッション)もイベントの良い空気感を作っていました。

ここにはファシリテーター3名のうちの一人として弊社から笹さんが参加していました。

(なぜ猫耳をつけているのはわかりません^^)

このような工夫も、イベント企画者のあやなるさんらしくて素晴らしいなーと思いました。

安田と池ノ上さんの後ろにいるのが、あやなるさんです。

この取り組みはどこかでマネさせてもらおうと思います🙏^^

9. なぜ私はパブリックな場所で失敗の話をするのか

私が公の場で、しかも経営者という立場で過去の失敗や挫折を包み隠さず語るのには、2つの理由があります。

  • 集合知を加速させる最短ルート 

成功体験は賞賛を生みますが、学びを生む速度は“痛みを伴う失敗談”の方が圧倒的に速いと考えています。 私の失敗が誰かの近未来なら、事前にシェアして回避策をバトンパスする方が社会の総学習コストは下がるはず、そう考えています。 私たちのビジョンの一部でもある「社会の進化」の実現スピードを上げていくことを目指しています。

  • “挑戦する文化”を体現する

クリエーションラインはCo-Creation Startupを掲げ、顧客とリスクもリターンも共有するビジネスモデルへ踏み出しました。 未知に挑む以上、転ぶ瞬間は必ず訪れます。 経営者である私が過去の転倒シーンをオープンに語り、それを学びに変えていくことで、失敗しても良いのだという空気を先に作っておく――それがメンバーへの「安心して挑戦していい」というメッセージとなり、行動を促すことにつながると考えています。

失敗を語ることは弱みを晒す恥ずかしい行為ではなく、未来の成功確率を上げる投資であると思っています。

10. さいごに

運営スタッフの皆さま、登壇者の皆さま、そして熱心に耳を傾けてくださった参加者の皆さま、本当にありがとうございました。 イベントで交わした議論と笑顔を、次のプロジェクト、次のプロダクト、そして次のコミュニティ活動へとつなげていきます。 再びお会いできることを楽しみにしています。

Author

代表取締役社長です。会社のみんなが快適に楽しく過ごせるにはどうしたら良いのかをいつも考えています。
最近8歳の息子はクワガタ虫にハマってしまい、虫取りに連れてけ連れてけとわーわー騒ぎます。「うるさいなー」と思いながらも、この可愛さはいつまで続くのかなぁと感慨深く噛み締めてます。

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