ブランディング講座3本から考えた、BtoB企業が「選ばれ続ける」ための6つのポイント

はじめに

何かにつけて「ブランディング」って言葉を耳にしますが、今回はブランディングについて改めて学んでみた(ブランディングの講座を3本受講した)ので、講座の内容から6つのポイントを取り上げ、BtoB企業でマーケティングを担当する立場からの感想や考察を添えてまとめてみました。
BtoBのIT企業である弊社クリエーションライン(以下、CL)にもそのまま当てはまる考え方が多いと感じました。

受講したのは、Udemyで公開されている次の3つの講座です。

  • [中級編]ブランディング戦略の方法・シンプルな13ステップと成功事例
  • スモールビジネスのための「指名される理由」の作り方:流行を追わず理念で選ばれるブランディング講座
  • 【選びたくなる】ブランディングのためのマーケティング心理学【購買心理編】

講座で紹介される事例は、飲食店や美容院、ジュエリー、食品など、BtoCのものが中心です。ただ、根っこにある「誰に、何を約束し、どう覚えてもらうか」という考え方は、法人のお客様と向き合う私たちの仕事にも共通しています。

ポイント1:ブランディングの目的は「売上」ではなく「関係性」

講座で最初に整理されていたのが、マーケティングとブランディングの違いです。マーケティングの目的は販売促進と売上の最大化で、ブランディングの目的は顧客との関係性を育てることだと説明されていました。ブランディングがなければ方向性を、マーケティングがなければ実行力を欠くので、両方が必要だという整理です。

別の講座では、この違いを「フロー型」と「ストック型」で表していました。新しいお客様を追い続けないと売上が止まる状態がフロー型で、信頼が積み上がって指名や紹介で関係が続く状態がストック型です。短期的なプロモーションは収穫作業のようなもので、土づくりや種まきがなければ実りは少ない、というたとえも印象に残りました。

BtoBでも重要な要素

BtoBのITサービスは、一度の取引で終わるより、プロジェクトや支援が続く中で信頼が積み上がっていくことが多い仕事です。検討期間が長く、関わる人も多いので、「関係性を育てる」という考え方は、むしろBtoBのほうが当てはまるのではないかと感じました。

講座では、売上を「接点数(L)×指名率(P)」に分ける考え方も紹介されていました。マーケティングの現場では、リード数やイベントの申込数といった接点数をどうしても追いがちです。接点数はもちろん大切ですが、イベントやウェビナーのあとに「この人たちに相談してみたい」と思ってもらえたかどうか、つまり指名率にあたる部分にも目を向けたいと考えています。

同じ講座では、広告費で接点数を競うより、人と人が直接関わる「小さく、リアル」な場で指名率を高めることを勧めていました。対面に限らず、直接言葉を交わせる場という意味です。CLでいえば、CLDAY(CLまつり)やAI駆動開発まつり、CLMeetupのように、エンジニアとお客様が直接やり取りできるイベントがそれにあたると思います。

ポイント2:物語の主役は、自社ではなくお客様

講座で特に強調されていたのが、ストーリーテリングの主役は顧客だという点です。創業の歴史や企業のミッションを語っても、主役が企業や社長である限り、顧客にとってのストーリーにはならないと説明されていました。

例として挙がっていたのが、ティファニーの「ダイヤモンド バイ ザ ヤード」です。ある女性がネックレスを知り、ブランドの世界観に惹かれ、人生の節目に自分へのご褒美として買うまでの流れが、顧客自身の成長の物語として描かれていました。

BtoBの例も紹介されていました。古いWebサイトを恥ずかしく思っていた町工場の社長に提供するのは、サイトの納品ではなく「誇りの回復」だという話です。支援の前と後で、お客様の気持ちがどう変わるかを描くことが大切だとしています。

自社に当てはめて考えたこと

導入事例やお客様インタビューの記事を書くとき、つい「CL(自分達)がどんな支援をしたか」「どんな技術を使ったか」を中心に組み立ててしまうことがあります。支援内容を正確に伝えることは大切ですが、それだけだと物語の主役はCLになってしまいます。

主役をお客様に置き換えると、記事の軸は「どんな課題を抱え、何に迷い、どう変わったか」になります。

これは、CLが掲げる「Co-Creation Sherpa」の考え方とも重なります。険しい山に挑むとき、そばにいてほしいのは道具を売る人ではなく、一緒に登る人です。CLが目指すのは、お客様のWhyに深く共感し、発注者と受注者という立場を越えて対話し、ともに学び、ともに乗り越える伴走パートナーとしてのシェルパです。

山に登る主役は、あくまでお客様です。事例記事でも、CLはお客様の挑戦を支えたシェルパとして登場すれば十分なのだと、講座を通して改めて感じました。

法人向けの記事でも、実際に読むのは一人ひとりの担当者です。「チームの雰囲気が前向きになった」「自分たちで改善を回せるようになった」といった、人の気持ちや行動の変化まで書けると、読み手が自分ごととして受け取りやすくなります。

ポイント3:「何でもできます」より、尖った記憶のタグ

講座でいう「記憶のタグ」とは、お客様の頭の中で、その会社やお店と結びついている短い言葉のことです。誰かに紹介するときに「〇〇といえば、あそこ」と口にする一言、と言い換えてもよいかもしれません。

人は何かを選ぶとき、「知っている」「よく知っている」という段階を経て、頭の中の候補リスト(想起集合)に入れたものから選びます。講座では、この枠は3つ程度といわれ、「悪くないお店」は候補に残らずに忘れられてしまうと説明されていました。

候補に残るために必要なのが、記憶に引っかかる尖ったタグです。講座では「元力士がやっている〇〇」「元バンドマンで音楽著作権に強い行政書士」といった例が挙がっていました。ここでいう独自性は機能の差ではなく、人柄や「らしさ」から生まれるものだとしています。逆に、「親切」のように誰にでも当てはまる言葉しか出てこないなら、まだタグとしては弱く、そこから磨いていけばよいという話でした。

タグを尖らせる方法として紹介されていたのが、「N=1」と「やらないこと」です。

N=1は、「30代女性」のようなおおまかな属性ではなく、顔が思い浮かぶ一人を描くことです。Soup Stock Tokyoは、37歳の架空の女性「秋野つゆ」を描き込み、メニューや空間、BGM、価格まで「彼女ならどう思うか」で判断して、「食べるスープ」という新しいカテゴリーを生み出した例として紹介されていました。

「やらないこと」は、約束を守るために、あえて手放すものを決めることです。講座では、何かに特化するために業界の常識を捨てた事例がいくつも紹介されていました。

事例特化したこと手放したもの
QBハウス約10分で終わるカット髪を切ること以外のサービス
カーブス女性専用、30分のフィットネスジムの常識だった鏡や男性の視線
スーパーホテルぐっすり眠れること宴会場など、睡眠に関わらない設備
ケンズカフェ東京ガトーショコラのテイクアウト1本イタリアンレストランとしての営業
炭焼きレストランさわやか品質と接客の温度感を守れる静岡県内での展開大手からの県外出店の提案

どの事例も、「何でもできる」状態を手放したことで、「〇〇といえばここ」というタグが際立っています。

CL(自社)での"タグ"は?

IT企業のWebサイトや会社紹介は、対応できる領域を幅広く並べた「何でもできます」型になりやすいと感じています。網羅していることは安心材料になりますが、講座の言葉を借りれば、記憶のタグにはなりにくい面があります。

CLも、クラウド、アジャイル開発、AI駆動開発、共創型スタートアップの取り組み「COSTA」と、複数の領域に取り組んでいます。領域が複数あること自体が問題なのではなく、それらをつなぐ「CLらしさ」を一言で言えるか、お客様や社内のメンバーがCLをどう紹介しているかが大切なのだと思います。

CLが掲げる「Co-Creation Sherpa」は、まさにこの「一言」にあたるものです。ただ、言葉を掲げるだけではタグにはなりません。お客様が実際に「一緒に登ってくれた」と感じ、そう紹介してくださることで、はじめて記憶のタグになるのだと感じました。

講座では、独自性は機能の差ではなく、人柄やらしさから生まれると語られていました。クラウドやアジャイル、AIといった言葉だけなら、ほかの会社も掲げられます。それをCLならではのものにしているのは、企業理念の「HRT + Joy」(謙虚・尊敬・信頼と、喜び)を大切にするカルチャーと、そこに集まった人たちなのだと思います。

「やらないこと」をWebサイトに書く必要はありません。ただ、社内で「この取り組みはCLらしいか」を判断する基準として持っておくと、発信の軸もぶれにくくなると考えています。

ポイント4:AI時代は、尖ったタグが「AIに選ばれる理由」になる

講座の中で、マーケターとして特に考えさせられたのが、AI時代の選ばれ方の話です。
購買を検討する検索(「おすすめ」「ベスト」などを含む検索)でGoogleのAI Overviewが表示される割合は、2024年の5%から2025年には83%に増えたという調査(BrightEdge Research)が紹介されていました。人が比べる前に、AIが候補を絞り込む時代になっているという指摘です。

購買行動は「AISAS」からAI起点へ

講座では、購買行動の変化を次のように整理していました。

  • これまで(AISAS):注意 → 関心 → 検索 → 行動 → 共有
  • これから(講座では「AI-DAS」と呼んでいました):AIによる予測・選定 → 発見・提案 → 即決 → 共有

これまでは、人が自分で検索して比べることが前提でした。これからは、その前にAIが候補を選び、提案するところから始まります。AIの候補に入らなければ、比較の土俵にも上がれない可能性があるということです。

「普通によいサービス」が候補から漏れる理由

講座によると、AIにとって一番扱いにくいのは「普通によいサービス」です。AIは、相談してきた人の状況とサービスを結びつけて提案します。どの点もそつなくよいサービスは、「誰に勧めればよいか」を判断する手がかりが少なく、結果として候補から漏れてしまうという説明でした。

反対に、尖ったタグがあれば、AIは「この悩みを持つ人には、ここ」と結びつけやすくなります。講座では、N=1と「やらないこと」で絞り込む作業が、そのままAI時代のタグづくりになると説明していました。

AIに「信頼できる情報」と判断されるには

もう一つのポイントが、タグと実態の一致です。講座では、AIはサービスが掲げるタグと実際の口コミを照らし合わせると説明していました。「静かな空間」を掲げているのに、口コミが「にぎやかで楽しかった」ばかりなら、推薦されにくくなります。

逆に、一人のお客様を本気で幸せにすれば、熱量の高い口コミが生まれます。その口コミがタグの裏付けになり、AIが次のN=1のお客様を連れてくる、という好循環が描かれていました。

AI時代に意識した方が良いと思うこと

AI検索の広がりは、BtoBのマーケティングにとっても見過ごせない変化です。担当者が情報収集の段階で生成AIに相談し、候補の会社を絞り込むことは、珍しくないと感じています。

BtoBに置き換えると、口コミにあたるのは導入事例やお客様の声、登壇、技術ブログ、外部メディアでの紹介などでしょう。AIに有効な情報と判断されるには、次のような点が大切になると考えています。

  • 自社が掲げるメッセージと、事例や発信の中身が一致していること
  • 「どんな課題を持つお客様と、何に取り組み、どう変わったか」が具体的に書かれていること
  • 自社サイトだけでなく、お客様や外部メディアなど、第三者の言葉でも同じ姿が語られていること

CLでいえば、「Co-Creation Sherpa」を掲げるなら、事例記事やお客様の声の中で「伴走してもらった」「一緒に悩んでくれた」という実感が語られていることが、何よりの裏付けになるはずです。

ポイント5:機能や技術より、「それでどうなるのか」を伝える

マーケティング心理学の講座では、もったいない広告バナーの例が印象的でした。健康食品のバナーでは、成分名を前面に出したものは「すごそう」ではあっても、「それで自分がどうなるのか」が伝わらないと評価されていました。マットレスのバナーでは、有名アスリートの愛用や航空会社での採用といった実績は伝わるものの、寝心地そのものが想像できないと指摘されていました。

ほかの講座でも、同じ考え方が繰り返し出てきます。ライザップの顧客が買っているのは減量そのものより「人生を変えたい」という気持ちだという話や、顧客はモノではなく感情の変化を買っているので、提供価値は機能だけでなく、顧客がなぜそれを求めるのか(Why)とセットで約束する、という話です。

自分の会社に置き換えて考えてみると

成分名が前面に出たバナーの話は、IT企業の発信にもよく当てはまると感じました。技術名や製品名、認定資格、パートナー実績を前面に出したくなるのは、BtoBのIT業界ではよくあることです。

技術の正確さや実績は、信頼の裏付けとして欠かせません。ただ、読み手が知りたいのは「それで自分たちのチームや事業はどうなるのか」です。ウェビナーの告知文やLP、技術ブログの紹介文でも、まず読み手の課題や変化の姿を示し、技術や実績はその裏付けとして添える、という順番を意識したいと思います。

講座では、共通認識に頼って「言わなくてもわかる」前提で話してしまうことへの注意もありました。社内では当たり前に使っている言葉が、初めて接する人には伝わらないことがあります。相手が何をわからないのか、何に困っているのかを先に考える、という基本を改めて意識したいところです。

「それでどうなるのか」に答えるには、まずお客様が「なぜそれをやりたいのか」を知る必要があります。
それはまさに、Co-Creation Sherpaの考え方の中心にある「お客様のWhyに深く寄り添う」ことです。

同じアジャイル開発の支援でも、「部署をまたぐと話が止まる」状況を変えたいのか、「外部に任せきりで社内にノウハウが残らない」状態から抜け出したいのかで、伝えるべき変化の姿は変わります。技術や手法といったWhatやHowの前に、お客様のWhyから語り始めることを、発信の場でも意識していきたいと思います。

ポイント6:すべての接点で「らしさ」をそろえる

講座では、Webサイト、電話、店舗、商品、包装のどこを切り取っても同じらしさが感じられる「金太郎飴」の状態をつくることが勧められていました。洗練された店なのに電話対応が事務的、こだわりの内装なのにトイレの芳香剤が安っぽい、といった小さなズレが、違和感や不信につながるという指摘です。デザインの面でも、色使いやフォント、余白、コピーのトーンに統一感を持たせることが、ブランドの世界観をつくると説明されていました。

一貫性を保つ方法として紹介されていたのが、マニュアルではなく判断基準を共有することです。雨の日に傘袋を渡すというルールしかなくても、理念が共有されていれば「今日は寒いから温かいおしぼりも添えよう」と自分で判断できる、という例でした。管理者は答えを与えるのではなく、「N=1のお客様ならどうされたらうれしいか」と問いかけるコーチになるべきだとしています。

自社で「金太郎飴」の状態をつくるには?

BtoBの接点は、店舗以上に多岐にわたります。Webサイト、技術ブログ、SNS、プレスリリース、ウェビナー、イベント、営業資料、提案、問い合わせへの対応、採用ページなど、担当する部署も人もさまざまです。マーケティングチームだけで、すべての接点をそろえることはできません。

CLでは、エンジニアがブログを書いたりイベントに登壇したりする機会も多くあります。一人ひとりがブランドの担い手だと考えると、細かなルールを増やすより、「CLは何を大切にしているか」という判断基準を共有するほうが現実的だと思います。

CLにとって、その判断基準の土台になるのが、企業理念として掲げる「HRT + Joy」です。HRTは、Humility(謙虚)、Respect(尊敬)、Trust(信頼)の頭文字で、書籍『Team Geek』に由来します。そこに、書籍『Joy, Inc.』に由来するJoy(喜び)を加えたものが、私たちの基本的な行動指針です。

ここでいうJoyは、ただ楽しく盛り上がることではありません。より良い価値をつくろうと試行錯誤しながら挑戦し、その過程で得られる充実感や高揚感のことです。マニュアルにない場面で迷ったときも、「謙虚に学べているか」「相手を尊敬できているか」「信頼して任せられているか」「その先にJoyはあるか」と問い直せば、どの接点でもCLらしいふるまいに近づけるのではないかと思います。

マーケターの役割も、ルールを決めて守ってもらうことより、各接点の担当者と一緒に「これはCLらしいか」を問い直すことにあるのかもしれません。

おわりに

3つの講座は、扱う事例も対象とする事業の規模も異なりましたが、共通していたのは、Whyを起点に方向性を定め、ぶれない軸を持つことの大切さでした。
最初の講座では、ブランディングがなければ方向性を欠くと語られていました。
別の講座では、施策は柔軟に変えてよい一方で、根っこにあるらしさはぶらさないこと、迷ったときはWhyに立ち返ることが勧められていました。

「誰のために、何を約束し、何をやらないのか」を言葉にすることは、その軸を形にする作業だと感じています。CLにとっては、企業理念である「HRT + Joy」がその土台にあり、お客様のWhyに深く寄り添う「Co-Creation Sherpa」も、その軸を表す言葉の一つです。

講座の締めくくりには、効率化や正解を出すことをAIに任せられる時代だからこそ、熱量や体温といった人間らしさの価値が上がる、という主張もありました。
挑戦の過程で生まれる充実感や高揚感を大切にするJoyも、まさにその人間らしさの一つだと感じています。技術を扱う会社であっても、最後に選ばれる理由の多くは人と人との関係にあるのだと思います。

今回ブランディングを学び直して改めて感じたことを、日々の発信やイベントの企画に生かしていきたいと思います。

Author

クリエーションラインのマーケの人。

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